書籍情報一覧

2015年8月 21

ヒノケイゾウカイコウタケシ  日野啓三/開高健

  • 日野 啓三 著/開高 健 著
  • ISBN:978-4-309-72891-9
  • 発売日:2015.08.10
  • 定価3,410円(本体3,100円)
現代の日本は他の国々に通じ、海の向こうの戦争や、世界観・宇宙観を共有するようになった。我々は今もこういう時代に生きている。(池澤夏樹)

解説 池澤夏樹
年譜 千野帽子
月報 奥泉光 角幡唯介

帯写真 Dayanita Singh

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

太平洋戦争が大岡昇平を作ったように、ベトナム戦争がこの二人の作家を育てた。
二人の姿勢は大きく異なる。日野啓三はいつも目の前の事象の彼方を見ていた。だから現代の先を夢見ることができた。開高健は目の前の事象と自分の魂の間の戦いを細密にしつこく書いた。彼には出口はなかった。

2015年6月 22

オオエケンザブロウ  大江健三郎

  • 大江 健三郎 著
  • ISBN:978-4-309-72892-6
  • 発売日:2015.06.12
  • 定価3,190円(本体2,900円)
この人の作品世界は広いのでなかなか全容が見えない。政治と理想、女性原理、辺境などの糸で織ったタペストリー。――池澤夏樹

[ぼくが選んだ理由]
戦争が終わって以来の日本人の精神の歩みにずっと沿って書いてきた作家。心やさしき伴奏者。高空の視点と地面すれすれの目線を自在に用いたパイロット。
選ぶのに迷うほどたくさんの作品の中から、女性原理を主軸にした長篇二つに短篇とエッセーで全体像を目指した。――池澤夏樹

死と再生、終末と救済を一貫して問い、闘い続ける圧倒的な大江文学。
女性原理を主軸にした長篇二篇に短篇とエッセーで全体像を提示する。
著者による加筆修訂。

[収録作品]
悲しみは人生の親戚――子どもの死に見舞われながら人生の事業に乗り出す女性を描いた長篇「人生の親戚」と汚染させた地球が舞台の近未来SF「治療塔」。
部屋に閉じ籠り<鳥たち>と暮らす青年を描く「鳥」、隣人となった「山の人」の自由への希求が市民たちを戦慄させる「狩猟で暮したわれらの先祖」。他に『ヒロシマ・ノート』より「人間の威厳について」、『私という小説家の作り方』より「ナラティブ・つまりいかに語るかの問題」。

解説=池澤夏樹
年譜=尾崎真理子
月報=中村文則・野崎歓

帯挿画=できやよい

[目次]
人生の親戚
治療塔

狩猟で暮したわれらの先祖
人生の威厳について
ナラティブ、つまりいかに語るかの問題

解説 池澤夏樹
年譜

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

戦争が終わって以来の日本人の精神の歩みにずっと沿って書いてきた作家。心やさしき伴走者。高空の視点と地面すれすれの目線を自在に用いたパイロット。
選ぶのに迷うほどたくさんの作品の中から、女性原理を主軸にした中篇二つに短篇とエッセーで全体像を目指した。

2015年1月 23

ナカガミケンジ  中上健次

  • 中上 健次 著
  • ISBN:978-4-309-72893-3
  • 発売日:2015.01.14
  • 定価3,080円(本体2,800円)
母をモデルにした長編「鳳仙花」、『千年の愉楽』より「半蔵の鳥」他短編、故郷・紀州のルポ作品等を収録。欲望と悲しみ・憤りを辺境の地・熊野を舞台に描いた中上健次の小宇宙。

解説=池澤夏樹
参考資料・年譜=市川真人
月報=東浩紀・星野智幸

帯写真=蜷川実花

[目次]
鳳仙花
半蔵の鳥
ラプラタ綺譚
不死
勝浦
鬼の話

古座
紀伊大島

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

わずか一世代前、人はこんなにも奔放に生きていた。恋情も憎悪も今よりずっと強烈に作用した。今の貧血の時代に中上健次は危ないかもしれないが、だからこそ彼が読まれるべきなのだ。彼の世界への入口として、奔放な女であり強い母であるフサの物語を供する。

2015年10月 24

イシムレミチコ  石牟礼道子

  • 石牟礼 道子 著
  • ISBN:978-4-309-72894-0
  • 発売日:2015.10.14
  • 定価3,410円(本体3,100円)
名作『苦海浄土』を背後で支えていたのは古代以来の人の営みと幸福であった。美しい文体がものがたる反近代の思想。(池澤夏樹)

解説 池澤夏樹
年譜 阿南満昭
月報=多和田葉子/小野正嗣

帯装画=クサナギシンペイ

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

この人が戦後日本文学でいちばん大事な作家、とぼくは信じる。代表作は「苦海浄土」だが、これは前に出した「世界文学全集」に入れてしまった。
あの代表作の背後から照らしていたのは、かつての水俣の幸福を書いた「椿の海の記」だった。「不知火」は過去の罪過を未来の浄化に繫げる。

2016年5月 25

スガアツコ  須賀敦子

  • 須賀 敦子 著
  • ISBN:978-4-309-72895-7
  • 発売日:2016.05.12
  • 定価3,080円(本体2,800円)
我々は海外の書を読むだけでなく、海外で暮らすところから生まれる文学を得た。それがなぜかくも豊饒な作品に結実したのか。(池澤夏樹)

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

明治以来、作家が海外での体験をもとに作品を書いた例は少なくないが、この人ほど徹底した例は他にない。
イタリアにいた時期の須賀敦子はそのままイタリア人だった。あの国の言葉と日本語を自在に駆使して暮らし、帰国した後はその日々を静かな文章で書いた。

2017年3月 26

キンゲンダイサッカシュウ01  近現代作家集 Ⅰ

  • 池澤 夏樹 編
  • ISBN:978-4-309-72896-4
  • 発売日:2017.03.14
  • 定価3,080円(本体2,800円)
この百年の間に書かれた傑作、今こそ読むに値する名作を、もっぱらモダニズムの尺
度から選んで供する。 ——池澤夏樹

明治以降の作家の名品を精選し、作品の時代背景順に収める『近現代作家集』。三巻
にわたってお届けする。

*収録作品

久生十蘭「無月物語」
神西清「雪の宿り」
芥川龍之介「お富の貞操」
泉鏡花「陽炎座」
永井荷風「松葉巴」
宮本百合子「風に乗って来るコロポックル」
金子光晴「どくろ杯(抄)」
佐藤春夫「女誡扇綺譚」
横光利一「機械」
村薫「晴子情歌(抄)」
堀田善衞「若き日の詩人たちの肖像(抄)」
岡本かの子「鮨」

解説=池澤夏樹
月報=荒川洋治・中島京子

帯装画=草間彌生

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

明治期に必死で西洋の文学を学びながら、その一方で日本の古典にも多くを負って小説というものを作った作家たち。更にそれを継承して大正と昭和の文学の中核を成した十数名の作家の佳品を、久生十蘭から金子光晴や岡本かの子まで、編者のわがままなセレクションでお目にかける。

2017年5月 27

キンゲンダイサッカシュウ02  近現代作家集 Ⅱ

  • 池澤 夏樹 編
  • ISBN:978-4-309-72897-1
  • 発売日:2017.05.15
  • 定価3,080円(本体2,800円)
戦争、敗戦、占領。
混乱期の中で開花した新しい作家たちの才能。
社会と対峙する20篇。


戦地と銃後、敗戦後の混乱期を経て安定した時代が来るまで、描かれたさまざまな風俗。
(池澤夏樹)

戦中から戦後までの作品を、モダニズムの尺度から精選。

武田泰淳 汝の母を!
長谷川四郎 駐屯軍演芸大会
里見弴 いろおとこ
安岡章太郎 質屋の女房
色川武大 空襲のあと
坂口安吾 青鬼の褌を洗う女
結城昌治 終着駅(抄)
中野重治 五勺の酒
太宰治 ヴィヨンの妻
井上ひさし 父と暮せば
井伏鱒二 白毛
吉行淳之介 鳥獣虫魚
久保田万太郎 三の酉
安部公房 誘惑者
室生犀星 鮠の子
川端康成 片腕
三島由紀夫 孔雀
上野英信 地の底の笑い話(抄)
大庭みな子 青い狐

解説=池澤夏樹
月報=加藤典洋・斎藤美奈子

帯装画=シシヤマザキ

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

これはもう現代に属する。終戦の年に生まれたぼくから一つだけ前の世代。戦後文学というものを構築した安岡章太郎、安部公房など二十数名の作家群。この人たちの書いたものを読んでぼくらは共感しまた反発しながら自分の時代の文学を作り上げた。懐かしいだけでなく、新たな驚きが多々ある。

2017年7月 28

キンゲンダイサッカシュウ03  近現代作家集 Ⅲ

  • 池澤 夏樹 編
  • ISBN:978-4-309-72898-8
  • 発売日:2017.07.12
  • 定価3,080円(本体2,800円)
昭和から平成、「3・11」、そして宇宙へ。
日本文学の未来を切り拓く名品18篇

編者が同時代人として発表ごとに読んできた作家と作品。日本の小説は大きく変わった。
(池澤夏樹)

内田百閒 日没閉門
野呂邦暢 鳥たちの河口
幸田文 「崩れ」(抄)
富岡多惠子 動物の葬禮
村上春樹 午後の最後の芝生
鶴見俊輔 イシが伝えてくれたこと
池澤夏樹 連夜
津島佑子 鳥の涙
筒井康隆 魚籃観音記
河野多惠子 半所有者
堀江敏幸 スタンス・ドット
向井豊昭 ゴドーを尋ねながら
金井美恵子 『月』について、
稲葉真弓 桟橋
多和田葉子 雪の練習生(抄)
川上弘美 神様/神様2011
川上未映子 三月の毛糸
円城塔 The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire

解説=池澤夏樹
月報=池澤春菜・山本貴光

帯装画=池田学

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

そしていよいよたった今の時代、未来に繫がる時代になる。編者が同時代人として発表ごとに読んできた作家と作品。
筒井康隆、津島佑子、村上春樹など。作為なく選んでいったのに、気付いてみたら女性の作家がずいぶん多い。ぼくの好みという以上にそれが傾向として定着したということなのだろう。

2016年9月 29

キンゲンダイシイカ  近現代詩歌

  • 池澤 夏樹 選/穂村 弘 選/小澤 實 選
  • ISBN:978-4-309-72899-5
  • 発売日:2016.09.27
  • 定価2,860円(本体2,600円)
詩はいつでもどこでも文学の中心。詩や短歌や俳句はむずかしいという先入観を一掃するセレクションを実現しよう。(池澤夏樹)

新訳にあたって 池澤夏樹

時代は詩形を創造する。
明治以降、我々は和歌以来の韻律から離れて行分けの長い詩を書くようになった。その大量の遺産の中から、声に出して読めて、日々の生活を飾れるものを精選する。
池澤夏樹

新訳にあたって 穂村弘

近代以降の短歌は、それ以前の和歌とは違っている。滅びかけていた歌が甦ったとも云えるけど、同時に、滅茶苦茶なジャンルになったんじゃないか。その面白さを読者とともに味わいたい。
29穂村弘

新訳にあたって 小澤實

近代現代俳句の世界も多様性に富み、深い。いかにして五十名の俳人の作品で示すか。五十名は多いようで、きわめて少ない。悩みつつ楽しみ、楽しみつつ悩んでいる。
ozawa

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

詩はいつでもどこでも文学の中心。詩や短歌や俳句はむずかしいという先入観を一掃するセレクションを実現しよう。

2016年8月 30

ニホンゴノタメニ  日本語のために

  • 池澤 夏樹 編
  • ISBN:978-4-309-72900-8
  • 発売日:2016.08.29
  • 定価2,860円(本体2,600円)
日本文学の定義は日本語で書かれていることである。言語と文学の関係を明らかにするための実例と日本語論を幅広く集め、豊饒の由来を明らかにする。(池澤夏樹)

ぼくがこれを選んだ理由 池澤夏樹

千三百年に亘って我々が文学を構築してきたところのこの日本語とは、そもそもいかなる言語であるか(←これは翻訳文体)。
古典から現代まで文体の実例を広く集めて羅列し、さらに日本語論の秀作によってこのランゲージの特性を明らかにする。
内容は実物を見てのお楽しみ。