石井光太『飢餓浄土』刊行直前インタビュー 聞き手・編集部 武田 神々しさ自体を露にする一冊―― 昨年の春から河出書房新社のWEBマガジンで連載していただいた『飢餓浄土』が、いよいよ単行本で発売されます。連載時の原稿を大幅に加筆修正し、書き下ろしを加えて一冊にしています。一言で言い表すのは難しい作品ですが、敢えて簡略化して言うならば、石井さんがこれまで見聞きし体感してきた異国での噂・幻の深層を追い、そこで露になった貧困地・途上国の実像を描き出した、これまでの石井さんの本とは別のベクトルでぶつかった一冊です。全四章・計一六本の物語が収められています。石井さん自身が、改めてこの『飢餓浄土』に流れる一本の線を指し示すとなると、どのように言い表せるのでしょう? 石井 書くにあたって、始めから下地に敷かれていた一本の大きな定義として、「人間というのは、何かにすがりついたり祈ったりする生き物だ」という定義がありました。僕は昔からその存在を「小さな神様」と呼んできました。 ―― 小さな神様? 石井 そうです。人間というのは、宗教という大きな枠組みだけではなく、一瞬一瞬でその場限りの神様を作っていくものです。例えば試験に受かりますようにと手を合わせるその瞬間、受験生の大半は「キリスト様」やら「アッラー様」以外の何か漠然としたものに祈っていますよね。頭の中で、その場限りの名もない神様を作って祈っているのです。 続きを読む |