ナギーブ・マフフーズ (マフフーズ,N)
1911-2006年。エジプトのカイロ生まれで、現代アラブ世界を代表する作家。1988年にはアラブ人作家として初めてノーベル文学賞を受賞した。カイロ大学哲学科を卒業後、短編集『狂気の独白』を出版して以来、半世紀にわたって精力的に文学活動に励み、50冊以上の長編と短編集を発表した。そのほかにも、多数の映画脚本、劇作、随筆を執筆し、現代アラブで最も多くの読者を持つ第一人者の作家の地位を確立した。代表作は、カイロ旧市街の中下層階級の庶民の生活を社会的なリアリズム手法で描いた「カイロ三部作」で、大河小説として不朽の名作と言われる。『バイナル・カスライン』はその中の第一作で「双宮の間」という意味である。残りの二作は『カスル・アッ=シャウク(愛欲の館)』、『アッ=スッカリーヤ(砂糖小路)』。第一次世界大戦頃からの激動の時代を背景に、緻密な構成、人物と場景の克明な活写、心理描写の繊細さなどを特徴として描かれている。