読者の声

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きつねのつき

単行本

キツネノツキ

きつねのつき

北野 勇作

定価1,760円(本体1,600円)

この本に寄せられた“ 読者の声 ”です。

★2012.03.06   父と娘、仲むつまじく暮らす親子。三歳の春子は最近よく言葉をおぼえ、舌足らずながら色々なことを話してくる。語り手である私は、それがとてもうれしい。毎日が驚きと発見の日々だ。そんな二人の日常が淡々と描かれる。そして、そこに非日常的なものが侵食してくる。大きな災害の後に残された人々の日常を描いているらしい。その災害が何なのかは最後まで明確に語られない。主人公の私がそれにどういう風に関わったのかも、彼の妻がその時、どんな目にあったのかも詳細は明らかにされない。真相は闇の中だ。しかし、その事実があってそれを乗りこえた人々がいる。環境の変化、世界の変化、すべてを受け入れてなんとか生きていこうとしている人々がいる。それが主人公である私と彼の娘の春子を取りまく世界を描くことによってディティールを語らずとも直球で読者の胸に届いてくる。ほのぼのと不気味に。

京都府 beck さん 43歳 男性