古井由吉自撰作品[全8巻]

発刊の辞

この道に迷いこんで四十年あまりになり、作品集を発刊する幸運に恵まれた。若い頃の作品は遠くなり、七十代のなかば、これからまだどんな作品がしぼられてくるか知れない。ひきつづき途上にある。こんな長旅になるとは思わなかった。それでもときおり、いまもたどたどしく言葉を綴る自分が、三十代四十代の自分と、そのまま重なることがある。とぼしさのほうへ付いた一作家、ここにおさめられるすべての作品を、現在のものとして、差し出します。

特徴

  • つねに未開の地を踏破し、いまもなお自在の境地で孤高の歩みをつづける著者による、記念碑的自撰作品集。主に単行本単位で厳選し、入手の難しい作品も多数収録した、珠玉の十八作品。
  • 各巻に添えられた投げ込み「月報」に、著者自身による「半自叙伝」を収録。各作品が生み出された半生のエピソードを今の視点から活写する、愛読者待望の書き下ろし。
  • 各巻の巻末に、現在活躍中の若手作家による「解説」を収録。古井作品への現代的なアプローチをひらく新たな視点を提示。[解説者]朝吹真理子/平野啓一郎/角田光代/佐々木中/保坂和志/堀江敏幸/島田雅彦/町田康
文学に繫ぎとめる力 柄谷行人(文芸評論)
私が初めて現代文学に関して書いた評論は古井論であったが、以来四十余年、古井由吉は私を文学に繫ぎとめる力を失わなかった、稀有な作家である。
言葉の魔術 蓮實重彥(文芸評論)
言葉はひたすら彼岸にたゆたい、触れることはおろか、瞳におさめることすらかなわぬ。そのもどかしさを、古井由吉は、此岸に生きる者にとっての極上の悦びとして操ってみせる。
触覚的な文体 清水徹(フランス文学)
視覚的なものを、こちらは肌で受けとめる触覚的なものとして喚起する古井由吉の文体は、最近しだいに、くすんだ穏やかさをまし、それとともに彼の小説は、独自の穏やかな日常性を、鮮やかに描き出すようになっている。
うごめく妖しさ 綿矢りさ(作家)
退廃してゆく自らの精神に耽る女の美しさなんて、古井さんに書いてもらわなければ、きっとずっと知らなかった。ゆらりとうごめく妖しさ。
過去にない体験を得て虜になった ピース又吉直樹
初めて古井さんの作品を読んだとき、比喩ではなく脳が揺れ目眩や酔いが現実に感じられた。読む者の身体に直接影響を及ぼす小説が存在することに驚き、過去にない体験を得て虜になった。
いままでも、いまも、これからもずっと 高橋源一郎(作家)
古井由吉がいなかったら、「日本語で書かれる小説」の世界は、もっとずっと寂しく、痩せたものに感じられただろう。いままでもそうだったし、いまもそうだ。だが、なにより驚くべきなのは、これからも、古井由吉はその領野に、新しいことばを贈り届けるにちがいないということだ。ぼくにはわからない。そんなことがどうして可能なのか。あるいは、どうして彼にだけそれが可能だったのか。そのことを理解するためには、もう一度、その全てを読み返すしかないのである。
クリマの作家 佐伯一麦(作家)
雨が降る、やむ。風が吹く、やむ。そこに未定の過去が生成し、人と世の日和を見る。古井由吉はクリマ(天象)の人である。
壮大な連作 黒井千次(作家)
一篇の小説は、自らの足で立つと同時に、他の様々なものに支えられている。作者が人の中で生きるように、作品も他の自作との関連の中に存在する。だから、「古井由吉自撰作品」全八巻は、作家の生命の壮大な連作として、読む者の前に現れるだろう。
古井由吉の歩行 吉増剛造(詩人)
古井由吉の歩行には、……芳香、……(薔薇らしいのだが、……)を嗅ぐ、……。あるいはこの先導獣が醸す空気の横振れに、途方もない、ハルかな、……(ニホン語の、……)未来の芳香を嗅ぐ、……。
“口いっぱいに吸い込んだ空気で作りました”(W・B・イエイツ)誰かが、古井作品の片隅で女が、低く、つぶやく。
『山躁賦』の天狗さん?
古井由吉の歩行には、文学の薄い、紅い、…… 傷口カサが、そこらじゅう、そこらじゅう!
古井由吉自撰作品[全8巻]商品写真
  • 【全8巻】揃特価28,560円[税込]
  • 2012年3月より毎月1冊配本、2012年10月完結。
    巻数と刊行順は異なります。
  • 体裁:46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/
    上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
  • 装幀・デザイン:菊地信義

古井由吉×福田和也(@東京堂神田本店)のトークイベントが 「ラジオデイズ」でダウンロードできます。

全巻内容

第1巻第1回配本・2012年3月刊杳子(第64回芥川賞)・妻隠/行隠れ/聖解説者:朝吹真理子ISBN978-4-309-70991-8
第2巻第6回配本・2012年8月刊水/櫛の火解説者:平野啓一郎ISBN978-4-309-70992-5
第3巻第7回配本・2012年9月刊栖(第12回日本文学大賞)/椋鳥解説者:角田光代ISBN978-4-309-70993-2
第4巻第4回配本・2012年6月刊親/山躁賦解説者:佐々木中ISBN978-4-309-70994-9
第5巻第3回配本・2012年5月刊槿(第19回谷崎潤一郎賞)/眉雨(「中山坂」(「眉雨」所収)第14回川端康成文学賞)解説者:保坂和志ISBN978-4-309-70995-6
第6巻第2回配本・2012年4月刊仮往生伝試文(第41回読売文学賞)解説者:堀江敏幸ISBN978-4-309-70996-3
第7巻第5回配本・2012年7月刊楽天記/忿翁解説者:島田雅彦ISBN978-4-309-70997-0
第8巻第8回配本・2012年10月刊野川/辻/やすみしほどを(『やすらい花』より)解説者:町田康ISBN978-4-309-70998-7
古井由吉 近影
古井由吉 (ふるい よしきち) 略歴
1937年(昭和12年)11月19日、東京都荏原区平塚(現・品川区旗の台)に生まれる。
1945年5月24日、未明の山の手大空襲により罹災、父母の郷里岐阜県で終戦を迎える。1953年港区立高松中学校を卒業、独協高校を経て都立日比谷高校に入学。1956年東京大学文科二類に入学。1960年、東京大学ドイツ文学科を卒業、卒論はカフカ。1962年同大学大学院修士課程を修了、修士論文はヘルマン・ブロッホ。
4月助手として金沢大学に赴任。1965年立教大学に転任。ブロッホ、ムージル等の翻訳を刊行。
1968年1月処女作「木曜日に」を同人誌「白描」に発表。1970年6月第一作品集『円陣を組む女たち』、7月『男たちの円居』を刊行。この年、大学を退職。阿部昭、黒井千次、後藤明生らを知る。
1971年1月、「杳子」により第64回芥川賞を受賞、同月、河出書房新社より『杳子・妻隠』、〈新鋭作家叢書〉『古井由吉集』を刊行。筆一本の生活に入る。
1977年9月、後藤明生、坂上弘、高井有一と同人誌「文体」を創刊。1980年『栖』で日本文学大賞を、1983年『槿』で谷崎潤一郎賞を、1987年「中山坂」(『眉雨』所収)で川端康成文学賞を、1990年『仮往生伝試文』で読売文学賞を、1997年『白髪の唄』で毎日芸術賞を受賞した。
その他の作品に『山躁賦』『野川』『辻』『白暗淵』『やすらい花』『蜩の声』などがある。

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全巻書籍詳細

古井由吉自選作品 1 2012年3月刊

内容紹介: 杳子・妻隠/行隠れ/聖 
解説=朝吹真理子
刊行記念特価: 2,730円[税込](本体2,600円)
※特価期限2012年9月末日迄。
以降、定価3,780円[税込](本体3,600円)
ISBN: 978-4-309-70991-8
ページ数: 428ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 2 2012年8月刊

内容紹介: 水/櫛の火 
解説=平野啓一郎

刊行記念特価:

3,780円[税込](本体3,600円)

ISBN: 978-4-309-70992-5
ページ数: 388ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 3 2012年9月刊

内容紹介: 栖/椋鳥 
解説=角田光代
刊行記念特価: 3,360円[税込](本体3,200円)
ISBN: 978-4-309-70993-2
ページ数: 328ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 4 2012年6月刊

内容紹介: 親/山躁賦 
解説=佐々木中
刊行記念特価: 3,360円[税込](本体3,200円)
ISBN: 978-4-309-70994-9
ページ数: 370ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 5 2012年5月刊

内容紹介: 槿/眉雨 
解説=保坂和志
刊行記念特価: 3,780円[税込](本体3,600円)
ISBN: 978-4-309-70995-6
ページ数: 462ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 6 2012年4月刊

内容紹介: 仮往生伝試文 
解説=堀江敏幸
刊行記念特価: 2,940円[税込](本体2,800円)
ISBN: 978-4-309-70996-3
ページ数: 328ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 7 2012年7月刊

内容紹介: 楽天記/忿翁 
解説=島田雅彦
刊行記念特価: 3,780円[税込](本体3,600円)
ISBN: 978-4-309-70997-0
ページ数: 396ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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古井由吉自選作品 8 2012年10月刊

内容紹介: 野川/辻/やすみしほどを(『やすらい花』より) 
解説=町田康
刊行記念特価: 3,780円[税込](本体3,600円)
ISBN: 978-4-309-70998-7
ページ数: 400ページ
体裁: 46寸伸判(191×131ミリ)/二段組・平均388頁/上製カバー装・角背/投げ込み「月報」付
装幀・デザイン: 菊地信義
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