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著者プロフィール
1954年、岩手県遠野市生まれ。
遠野で育ち、子どもの頃から小説家になりたいと思っていた。岩手大学教育学部卒業後は、臨時採用教員として働きながら教員採用試験を受けるが、毎年ことごとく失敗。目の前が真っ暗になるほど落ち込む中で夫と出会い、結婚。
30歳で上京し、息子と娘の二児に恵まれる。都心近郊の住宅地で子育てをしながら、深沢七郎、石牟礼道子、町田康、河合隼雄、上野千鶴子の本を愛読していた。55歳のとき、夫が突然、脳梗塞で死去。悲しみに暮れ自宅に籠る日々を送っていると、息子から「どこにいても寂しいんだから、外に出たら」と小説講座を勧められ、通いはじめる。主婦業の傍ら本作を執筆し、2017年、第54回文藝賞を受賞しデビュー。2018年1月、同作で第158回芥川賞を受賞する。
試し読み
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。
結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――
若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』本人朗読ムービー
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書評・紹介記事一覧
文藝賞とは
1962年に雑誌「文藝」(*)で創設された新人文学賞。日本における新人作家の登竜門とされ、第1回の高橋一巳『悲の器』をはじめ、
田中康夫『なんとなく、クリスタル』、山田詠美『ベッドタイムアイズ』、長野まゆみ『少年アリス』、星野智幸『最後の吐息』、鹿島田
真希『二匹』、綿矢りさ『インストール』、羽田圭介『黒冷水』、白岩玄『野ブタ。をプロデュース』、山崎ナオコーラ『人のセックスを笑
うな』、青山七恵『窓の灯』、磯崎憲一郞『肝心の子供』などが受賞。実力と才能を兼ね備えた作家たちが次々にデビューしています。
*当時の編集長は坂本一亀(坂本龍一の父)