大反響を呼んだあの名作が、早くも文庫化。深夜2時46分、そのラジオは聴こえてくる―

いとうせいこう

想像ラジオ いとうせいこう

耳を澄ませば聞こえるはず―

想像ラジオ いとうせいこう

いとうせいこうさんによる『想像ラジオ』朗読を聴いてみる

いとうせいこう×千葉雅也 対談

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著者いとうせいこうからのメッセージ

長いブランクのあとで書きおろした小説になりました。
自分が書いたというより、自分はこの小説の入れ物として机の前に座っていたという気がします。
どうぞ皆さんの耳にも想像ラジオが聴こえますように。
そして投稿、リクエストなどなどいつまでも御参加下さい。
これは小説でもあり、「想像ラジオ」というひとつのメディアでもあるのでしょうから。

対談 いとうせいこう×星野智幸 像すれば絶対に聴こえる

いとう
昨年、星野くんと陣野(俊史)さんが、僕の『ワールズ・エンド・ガーデン』(新潮社/1991年)と『去勢訓練』(太田出版/1997年)について書いてくれましたよね。僕はね、十数年以上経て、作品に応答があったことに、すごく驚いたんです。もう誰もあの作品のことは知らないだろうと思っていたし、自分自身もずいぶん久しく小説を書いていなかったから。
星 野
いとうさんが沈黙なさる前の最後の作品が『去勢訓練』でしたね。
いとう

『去勢訓練』を書いていた頃が、小説を書くことができたギリギリの時期だったんだと思います。いつのまにか今回の「想像ラジオ」発表まで、16年が経ったらしいんですよ。その間、書かないというよりは、書けなくなってしまっていた。

奥泉光さんとの『小説の聖典』(単行本『文芸漫談』を改題)でも再三言ってるんだけど、連載をしている途中のある時から「コップが落ちたので割れた」みたいな文章が書けなくなったんです。「ので」の部分が書けない。現実は「ので」で示すほど因果関係の通りがいいわけじゃないって思うと、文章がつながるということ自体も嫌になっちゃう寸前だった。去勢されたエロティシズムだけで自分を鼓舞することはなんとかできたけど、それも連載が終わると、もう何も書けなくなったんですね。

その時期に、友達がよかれと思って、田舎の山に連れて行ってくれたんですよ。それで蝶がひらひら飛んできて、それを「あ、蝶だ」って言おうとしたら吐きそうになったんです。完全にうつの症状なんだけど(笑)。名指すっていうこと自体にものすごい嫌悪があって、たとえば「世界を横切っていく色」くらいに捉えたほうがまだましだったんですね。世界を構成することにほとほと嫌気がさした。

だから「男がいてこうなってこうなります」なんていう物語はもうとても書けないわけですね、「ので」への憎悪で。それでも連載はなんとか終えた。ただ、この「蝶」の体験を奥泉さんに話したら、「それはやっぱり『蝶』って呼んだほうがいいと思うよ」って言ってました(笑)。

星 野
さすが奥泉さんですね(笑)。
いとう

「そんなの当たり前だから書け」と。それをずっとこれまで言われてきたんだけど、自分では感覚的に無理を感じていたんです。それでもようやく3年ぐらい前からまた少しずつ、自分のブログで3本同時に小説を連載したり、佐々木中くんに焚きつけられて『Back 2 Back』を書いた。

自分がまた書けるんじゃないかと思ったのは大西巨人さんのミステリーを、ある時期集中的に読んだのがきっかけでしたね。登場人物の名前がありもしない変な名前だったりするでしょ? 近代小説の中ではありもしない名前というのはアレゴリックだから、最初に避けられるじゃないですか。その変な名前の人が「1998年の何月何日の午後何時何分、どこどこ発の列車の先頭車両から3両目のこの座席に乗った」みたいなことまで、ひとつひとつ細かく書いてある。細々と本当らしくすればするほど虚構の世界になっちゃうんですね。こういうやり方もあるんだと思ったんです。

現実に似せて虚構を描く近代文学の自然主義ぶりが嫌で、別の虚構が欲しい、横光の第四人称はどうだろうとか迷走し続けてた。その長い年月の末、もうどうしたらいいか分からないなあと思っていたときに、大西巨人さんの本当らしく書こうとすればするほど滑っていくという、あの芸が自分を励ましちゃったんだよね(笑)。

全文を読む

内容紹介

海沿いの町で、なぜか高い杉の木のてっぺんに引っかかっているというDJ(ディスク・ジョッキー)
アークがパーソナリティをつとめる番組「想像ラジオ」。
彼は「想像」という電波を使って、「あなたの想像力の中」だけで聞こえるラジオ放送を続けている。
リスナーから次々に届くメールを読み上げ、饒舌におしゃべりを続けるアークだったが、彼にはどうしても聞きたい、ひとつの〈声〉があったーー。

想像ラジオ
いとうせいこう

  • 本体価格 450円+税
  • 発売日 2015/02/06
  • ISBN 978-4-309-41345-7

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