単行本 カノン
- 単行本 46変形 / 376ページ
- ISBN:978-4-309-02266-6 / Cコード:0093
- 発売日:2014.03.10
- 定価:1,980円(本体1,800円)
- ×品切・重版未定
内容紹介
記憶を失っていく難病の32歳・女性。末期ガンを宣告された58歳・男性。男と女はそれぞれの目的を果たすため、互いの肉体に“入れ替わる”ことを決意するが!? 各紙誌絶賛の圧倒的傑作。
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中原清一郎(外岡秀俊)さん特別寄稿
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三年前、長年勤めた会社を早期退職し、郷里の札幌に帰った。ホームに入った父は
認知が進んでほとんど会話できず、時々視線が合うと、微笑むことがあった。
毎夕、料理をつくって実家に持参し、母と晩酌をする。父の生前、よく母がこう
いった。「意識がしっかりして体が不自由なのと、頭は朦朧としていても体が自由な
のと、どちらが幸せなのかしら?」。それは、母にも自分にも、いずれ突きつけられ
る晩年の不可避の選択だ。
医療の発達で、人の平均寿命は驚くほど延びた。もちろん幸せなことだが、思いが
けない出来事が随伴する。以前であれば露呈しなかった認知症が、ほぼすべての人の
最期に訪れる。脳の衰えとどう向き合い、尊厳ある最期をどうまっとうすればいいの
か。そう自分に問いかけたとき、物語の種子が蒔かれた。一方には意識がいまだしっ
かりしていながら末期の肉体をもった人がおり、他方には健全な肉体をもちながら記
憶を失いつつある人がいる。その二人が契約を交わして、脳の一部を交換したら?
もちろん突拍子もない空想だ。でもそこで起きることは、科学技術の発展によって
間延びした人生のリアルな描写になる可能性がある。そうやって物語を書き始め、突
き動かされるようにして書き終えた。雑誌に掲載された作品を読んだ何人かが、「一
日で読み終えた」「続きが気になり、風呂に入りながら読んだので雑誌がぼろぼろに
なった」といってくださった。作者にとって、これ以上の褒め言葉はない、と思った。
著者紹介
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