全集・シリーズ 図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔
- 単行本 A5変形 / 152ページ
- ISBN:978-4-309-76192-3 / Cコード:0339
- 発売日:2012.06.21
- 定価:1,980円(本体1,800円)
- ×品切・重版未定
内容紹介
幻想に包まれた「英国執事」。その歴史と現実の生活をさまざまな図像と資料を用いて明らかにする、初めての一冊。古き良き時代の、貴族と男性使用人たちの生活とは?
何を思い、どんな仕事をしていたの? 何時に起きて、給料はいくら? 出世の道は? 恋や結婚は? 御主人様や奥方様とのあやうい関係? ときには犯罪に走ることも……?
コミック『黒執事』作者、枢やな氏推薦!
【本文より抜粋】
●第4章「執事の日課」より
「私は正面玄関までの階段をのぼり、ドアベルを鳴らしました。すると、お仕着せ姿のあかぬけたフットマンが出てきました。私は、執事のミスター・リーを呼んでくれるよう頼みました。
『あなたは下級執事の職に応募してきた人でしょう』と彼は物柔らかに言います。
『そうです』と私は答えました。
『では、通用口のほうにお回りいただけますか。空堀(エアリア)を降りて、そこにあるベルを鳴らしてください。こちらのドアはアスター卿夫妻とそのお客様専用です』
私は一フィート(*三〇・五センチメートル)ばかり身長の縮む思いをしながら、言われたとおりにしました。すると驚いたことに、下のドアを開けて現れたのは、さっきと同じフットマンだったのです。満面の笑みをたたえています。
『ずっと長いこと、これを言えるときを楽しみにしていたんだ』と彼は言います。
『俺がこの仕事を始めたとき、同じことをやらかして、いまみたいな歓迎を受けたものでね』
この男は、あとでわかったことですが、ゴードン・グリムレットで、彼と私は生涯の親友になりました」
●第7章「執事の堕落」より
スタッフの窃盗に目を光らせていたアーネスト・キング(執事)だが、そういう彼自身も、若き日にはちょっとした「過ち」を犯したことがある。温室で育てられた、その年初めてのイチゴを、誘惑に負けて食べてしまったのだ。がまんできずに二つ目を口元にはこんだところ、後ろから声をかけられた。「アーネスト、ほどほどに頼む! 私の分も少し残しておいてくれよ」──主人はそれだけ言って去っていった。彼にとって「生涯一度きりの窃盗」であった。
目次・収録作品
第1章 執事の起源
第2章 主人の生活
第3章 執事の出世
第4章 執事の日課
第5章 執事の生活
第6章 執事の余暇
第7章 執事の堕落
第8章 執事と主人
著者紹介
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