全集・シリーズ 図説 英国貴族の令嬢

図説 英国貴族の令嬢

  • 図説 英国貴族の令嬢

お嬢さまも楽じゃない!?
華やかに見える彼女たちの日常、その裏側の現実とは──?

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  • 全国学校図書館協議会選定図書

内容紹介

英国が爛熟を極め、転換への道を歩み始める19世紀~20世紀初頭。貴族の令嬢が過ごした豊かで華やかな暮らしぶりと、その陰に秘められた心情を、当時の日記や回想録などの貴重な資料を元に辿る。

●第3章「令嬢の社交界デビュー」より

 有名店に行き、あるいは馴染みのドレスメーカーを呼びつけ、細心の注意をはらって晴れの日のドレスをつくる。しかし伯爵家令嬢シンシア・アスキスは、その過程にはさほどのときめきを感じなかったようだ。

[引用]
 さて次は、果てしなくうんざりする試着の時間。わたしが右足、左足と体重を移し、退屈でピクピクとひきつりながら立っていると、尊大でまじめくさった女性たちが、口いっぱいにピンをくわえ、巻き尺を首にかけて、わたしの足元にひざまずいて議論をたたかわせつつ、要所要所で、本当はあまり関心がなさそうなわたしの母に訴えかけている。
「そうね、きつすぎるわね」と、優柔不断な母がいつになくきっぱり宣告した。
「きついですって?」と、侮辱されたようすで、仕立て屋が口にくわえたピンのあいだからもごもご言った。「わたくしはゆるすぎると言っていたのですが!」(略)
 波打たせてまとめ上げたばかりの髪に、白いダチョウの羽毛を三本突き立てると、家のコックと部下たちが「あんれまあ! シンシー嬢がまるで別人になっちまったよ!」と言った。彼女たちは、渦を巻く白いちりめん(クレープ=デ=シン)のドレスがわたしを縛り上げるのを——そう、ほんとうに文字通り縛り上げられたのだ——そして、長くてどうにも手におえない裳裾(トレーン)がわたしの広すぎる肩に取り付けられるところを見ていた。「かわいそうに、あんなこれっぽちも似合わない羽根なんか付けさせられて!」
(シンシア・アスキス 一九五二年)

 白く渦巻くドレス、髪に飾る白い羽毛の飾り、そして長い長い裳裾。ドレスの色は、とりわけ社交界に出ていく未婚の女性(デビュタント)であればかならず白ときまっていた。ただ、髪に飾る羽根は、手引書を照らし合わせると、どうも「既婚女性は三本、未婚女性は二本」ときまっていたらしく、シンシアの記憶違いかもしれない。

著者紹介

村上 リコ (ムラカミ リコ)

東京外国語大学卒業。著者に『図説英国執事』『図説英国貴族の令嬢』(河出書房新社)、翻訳に『図説イングランドのお屋敷』『図説英国インテリア史』(マール社)等多数。アニメ「黒執事」の時代考証にも携わる。

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