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  1. ノンフィクション

単行本

センジョウカライキノビテ

戦場から生きのびて

ぼくは少年兵士だった

イシメール・ベア

忠平 美幸

受賞
読売、毎日

単行本 46 ● 340ページ
ISBN:978-4-309-20486-4 ● Cコード:0098
発売日:2008.02.08

定価1,760円(本体1,600円)

×品切・重版未定

  • 「いつも殺すか殺されるかだった……」。普通の12歳の少年が15歳まで激しい内戦を兵士として闘わされ、立ち直るまでの衝撃の体験を綴る「感動の物語」。黒柳徹子氏推薦。世界的ベストセラー!

    訳者の忠平美幸さんからコメントを頂きました!

    訳者より

     著者イシメール・ベアが生まれ育った西アフリカのシエラレオネには、語り部の文化があります。本書の最後にも、満天の星の下、子どもたちが焚き火を囲んで座り、老人の語る寓話に耳をかたむける場面が出てきます。翻訳を進めながらわたしは、イシメールの手記全体に、そんな伝統文化を受け継ぐ「何か」、聴き手の想像をかきたてる語り手の妙技のようなものを感じていました。

     少年の目をとおして見た内戦を、思い出すままに書きつづったものですから、本書には正確な日付や場所などが、まったくといっていいほど出てきません。もしかしたら本人の記憶違いや勘違いも混じっているかもしれません。それでもなお、この物語には圧倒的な説得力があります。

     当時12歳だったイシメール少年は、「行ってきます」さえ言わずに家を出たあと(明日帰ってくるつもりの、ちょっとした外出だったからです)、道中で戦禍に巻き込まれてしまいます。悲鳴をあげて逃げまどう人びと、飛び交う銃弾、廃墟と化した村々、そして死体の山。おぞましい光景を目のあたりにし、命からがら、ぎりぎりの逃避行のすえたどりついた政府軍キャンプで、気づいたときには、自分自身が殺人マシーンに仕立てあげられていた・・・・・・。

     こうした戦いのむごたらしい場面や、少年兵が「洗脳」されていく過程、そしてその後更正施設に入って人間性を取り戻すまでの苦闘は、たしかに衝撃的ですが、それとは別に、不思議とわたしの印象に残っているのは、イシメールが逃げる途中で知り合った同年代の仲間たちとの友情や、生まれて初めて大西洋を見たときの興奮、芳醇なパーム油を使った素朴で美味しい郷土料理、そして彼が幼かったころの楽しい思い出などです。

     戦火とは無縁のシエラレオネが彼のなかではまだ生きていて、話の随所にちりばめられているのです。ああ、わたしが感じた「圧倒的な力」――外からやってきた人間が書く、いかに正確な報道記事からも伝わってこない説得力――は、これなのかもしれません。物語のなかへと読者を引きずりこんでゆく著者イシメールの力量は、こんなところにも発揮されているのでしょう。

     シエラレオネの内戦によって、たくさんの生命が奪われました。少年兵士として戦場に立たされた子どもたちは、心に深い傷を負い,今も苦しんでいます。その現実があまりにも強烈なので、ともすると見過ごされがちですが、彼らの故郷の伝統文化、人と人とが信頼しあえる地域社会、美しい自然といった、子どもたちが幸せに、のびのびと育つうえで不可欠な環境も、この戦争によって多くが壊れ、消えてしまったにちがいない――本書を読むと、そのことに気づかされます。

     今回、日本の読者に向けてイシメールは「世界のいろいろな文化に接してほしい・・・・・・異なる文化に接して異なる考え方を知ることは大切です」というメッセージをくださいました。本書を読み終えたら、どうぞ目をとじて思いうかべてください。彼の故郷の文化を。あの国に起こった悲惨な内戦と、それによって失われたものの大きさを。

                        忠平 美幸

著者

イシメール・ベア (ベア,I)

1980年、アフリカ西部シエラレオネ生まれ。12歳で内戦に巻き込まれ、政府軍の少年兵士として前線の激しい戦闘に参加。1996年にユニセフに救助、国連国際子ども会議で演説。現在、ユニセフ親善大使。

忠平 美幸 (タダヒラ ミユキ)

早稲田大学第一文学部卒。同大学図書館司書を経て翻訳者。主な訳書に『お茶の歴史』『サードプレイス』『遠すぎた家路』『悪の製薬』『美しい荘厳な芸術 ヨーロッパの大聖堂』など。

読者の声

この本に寄せられた読者の声一覧

 貴重な体験談を拝読させて頂ました。自分の生きている所以外には興味が無く、世界など別次元だと思っていた十代に、地球のどこかでは、同じ時に、同じ年代の人間が、人で在る事を放棄させられている事実を知りました。一発の銃弾が重いのか人の命が軽いのか。亡くなった命が余りにも重かったので銃弾が軽くなったのか。イシメールさんにとっては一瞬の出来事だったのかと思います。これは思いじゃなく経験という事実だと言う事が私にとって近くて遠い気がします。人の血は見慣れた物ではありません。しかもそれを好む人になった。同じ人でも人では無い。しかし私自身その様な時が来ればどうなるかと、この国いて思います。無礼で申し訳ございませんが著書で述べられた様な事を体験され、又、後世の為、著書して頂いた事に深く感謝させて頂きます。ありがとうございます。 (健次 さん/30歳 男性)

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