単行本 46変形 ● 256ページ
ISBN:978-4-309-02939-9 ● Cコード:0093
発売日:2021.01.27
定価1,980円(本体1,800円)
○在庫あり
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37年ぶりに同窓会で再会した、かつての恋人・亮と瞳子。出会った瞬間、二人は今も思いが変わらないことに気づく。だが各々の私生活での嘘が二人を追いつめる。還暦の恋を描く長編小説。
ラストでの謎かけのような救いは、書きあぐねていた亮が果たした「作家の役目」そのもの。
そのことがいっそう哀しく、美しい。
北村浩子氏(フリーアナウンサー)
カンレキの恋を描く感動作!
37年ぶりの同窓会——かつて恋人同士だった柊瞳子と和久井亮は、再会した。
都内にある柊総合病院の一人娘だった瞳子は、学生のころ医者を目指していたが挫折し、医者の婿養子をとることを条件に、北関東のとある国立大学の比較文化学類に進学した。
そこで瞳子は、亮と出会った。
二人は、夭逝の詩人花邑ヒカルの詩集の中で「あなたがはいというから」という詩がいちばん好きだという、ただそれだけで、互いを信じ惹かれあう。その深い結びつきは、周囲から「魂の双子」と呼ばれるほどだった。だがあることをきっかけに、二人はいとも簡単に別れてしまったのだ。
そして今、59歳になった瞳子は、親との約束どおり、優秀な脳外科医・進と結婚し、一人息子をもうけ、息子・優斗は外科医に成長していた。
一方、学生時代作家を目指していた亮は、在学中に父親を亡くし、母親や弟を養うために証券会社に就職した。その後、紆余曲折を経て、55歳のときにようやく最初の小説「曲がり角の彼女」を発表した彼は、デビュー作が映画化されベストセラーとなり、今や有名作家になっていた。
それぞれ別の人生を歩んできたはずの二人——だが再会した瞬間、二人は互いの気持ちがあの頃と全く変わっていないことに気づいてしまう。
「亮のことを思うと、妻として母として生きてきた37年の月日がなかったように感じるのがこわかった。これが我を忘れるということなのだ」
亮のデビュー作は実話をもとにした恋愛小説だった。主人公を振り回すエキセントリックな女のモデルは妻・麻衣子で、実生活でもそんな彼女を愛していると亮は取材で明かし、ますます小説は話題になっていった。だが実際の亮は、小説を書き終えた後になって、妻を愛していないことに気づき、その上、妻の人生を小説に利用したことに苦しみ、酒に逃げ、新しい小説を書けなくなっていた。
「オレね、麻衣子を愛してない。それどころか憎んでる」「噓をつくつもりなんてなかった。十年もオレを養ってくれたんだ。ほんとに愛してると思ってた。書き終わるまでは」
そして何不自由ない優雅な生活を送る院長夫人の瞳子にも、噓があった。それは一人息子・優斗の出生にまつわるものだった。
生きていくためについた瞳子と亮の噓は、37年ぶりの再会をきっかけに、徐々に暴かれ、二人は追い詰められていく。亮は新たな小説を書くことで、瞳子を救おうとするが !? 大人の最後の恋を描く圧倒的感動作。
著者
谷川 直子 (タニガワ ナオコ)
1960年神戸市生まれ。2012年『おしかくさま』で文藝賞を受賞。他の著書に、『断貧サロン』『四月は少しつめたくて』『世界一ありふれた答え』『私が誰かわかりますか』などがある。
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