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編集担当が語る「色の生きもの図鑑」シリーズ

 服を選ぶ時、全身黒でまとめるとオシャレに見えるのに、全身ピンクだとちょっと
ユニークな人に見えるのはなぜでしょう。どこか常軌を逸したような、違和感を抱く
のでしょうか。

 タヌキ、ウマ、パンダ、カモノハシ、ヒト......われわれを含む哺乳類は、たいてい
茶色か白か黒かのバリエーションしかない、とりわけ地味な存在。ですが、自然界を
俯瞰すると、想像を軽やかに超えるほど、不思議で美しい色をまとった生きものたち
がいます。

 本シリーズ「色の生きもの図鑑」は、赤・白・青・黄色と各巻1色のみで構成した
ビジュアルブック。セルリアンブルーの羽根が見事なモルフォ蝶、生物最強の毒を持
つ、全面真っ黄色のモウドクフキヤガエル、赤×黒×白のしま模様がオシャレなミルク
ヘビ、白玉団子みたいなシロヘラコウモリ......などなど。求愛、威嚇、擬態、警告
と、目的はさまざまで、色の理由が解明されていない生きものもいます。いずれもた
め息が出るほど美しく、あるいは奇妙でオモシロイのですが、僭越ながら1つお勧め
を挙げるなら『赤い生きもの図鑑』に登場する海の珍獣・ズキンアザラシです。

 生息地は北極海や北大西洋。エビやタコ、ニシンなどを食べてのんきに暮らす2
メートル強のアザラシですが、繁殖期になるとメスを手に入れるべく、オス同士の激
しい争いが始まります。勝ち負けのルールは、普段はたるんだ黒い鼻を丸く膨らま
せ、大きい方が勝利。......本当です。しかし両者でその大きさが変わらない場合、鼻
の内側の真っ赤な粘膜を膨らませて外に飛び出させ、赤い鼻ちょうちんで威嚇を始め
るのです。

 そもそもズキンアザラシ(英名:Hooded Seal=頭巾をかぶったアザラシ)の名前
は、鼻の皮膚を膨らませると頭巾のように見えることからつけられました。
 そしてこの赤い風船は、メスに求愛する時にも登場するそう。風船を左右に振ると
「ぽこん、ぽこん」と音がします。......そんなに無理して、鼻血出ないのか心配にな
りますね。
 残念ながらズキンアザラシは日本の動物園・水族館にはまだいません。ご興味があ
れば一度本書を開いてみてください!

 本シリーズ4冊は、いずれも上野動物園元園長の小宮輝之先生の監修で、分布や生
態などのデータを収録、読みものも充実しています。同じ1色で海、山、空の生きも
のまでぐるっと駆け足で眺めると、その多様さに夏の疲れも吹き飛ぶかもしれませ
ん。


編集担当

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *

【関連書籍】
小宮輝之監修 ネイチャー&サイエンス編『赤い生きもの図鑑

小宮輝之監修 ネイチャー&サイエンス編『白い生きもの図鑑

小宮輝之監修 ネイチャー&サイエンス編『青い生きもの図鑑

小宮輝之監修 ネイチャー&サイエンス編『黄色い生きもの図鑑

※ポスターがこちらよりダウンロードできます。

(初出:『かわくらメルマガ』vol.81 編集担当が語る『キング・オブ・スタイル:衣装が語るマイケル・ジャクソンの世界』)