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本屋さんつれづれの最近の記事

高嶋哲夫は、警鐘を鳴らす。首都移転の重要性を問う『首都崩壊』、大地震と津波を
予見した『M8』『TSUNAMI』、パンデミックによる首都封鎖を描いた『首都感
染』、原発の問題に切り込んだ『メルトダウン』......どの作品も極上のエンターテイ
ンメントでありながら、私たちの身体の奥深くに危機意識を刻み込む。

そんなシミュレーション&パニック小説の第一人者として名高い高嶋氏が今回私たち
に体験させてくれるのは、まさに「究極のシチュエーション」ともいうべき状況だ。

日本の脳研究の最前線を走る医師・本郷を襲った突然の自動車事故。気付けば彼は、
一条の光もない闇の中に横たわっていた。「死」という文字が、本郷の脳裏を過る。
「死んだのだ。僕は死んでいる。(中略)では僕は何だ。何なのだ。魂が病室に留
まっているとでもいうのか。」ーー一度は覚悟した「死」の現実......しかし、彼は気
付いてしまう、自らが置かれている衝撃の状況に。K大学医学部脳神経外科病棟三〇
五号室の水槽の中で、「彼」は「脳」だけとなり<生かされて>いたのだ。

医学は日進月歩の進化を遂げている。だとすれば、このシチュエーションを、誰が
「現実味がない」と言えるだろうか?
本郷の仲間であり同僚の医師たちは、「脳」を前に問い続ける。「これで果たして、
生きているといえるのか......「人間における『死』とは何なのか?」と。
これは、医学の奇跡か、それとも罪か?
生と死の境界とは? そして人間は何を持って人間と言えるのか?
「人間とは何か?」という本質的な問題に挑んだ、前代未聞の傑作がいま、誕生し
た!

* * * * *

と、いつも以上に(ある意味で)ディーブな設定ではありますが、そこは高嶋さん、
極上のエンターテインメントであり、「命」を巡る感動作となっています。

さらに言えば、舞台がほぼ「K大学医学部脳神経外科病棟三〇五号室」からの一視点
であることも、作家としての大いなる挑戦作とも言えるかと思います。

「今日、僕は、脳だけになった」という衝撃的な帯が躍る著者の新たな代表作『浮
遊』を、是非、店頭でご覧下さい!!!

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
【関連書籍】
高嶋哲夫『浮遊

(初出:『かわくらメルマガ』vol.98 芥川賞作家・藤沢周によるもう一つの巌流島 『武蔵無常』待望の刊行!)
東京・霞が関といえば中央省庁やその関連施設が多く、どちらかというとお堅い感じ
の街である。
しかし驚くなかれ、このような場所に我々本好きをワクワクさせる書店さんがある。
書原 霞が関店のことだ。

一見間口の感じだと、それほど広くなさそうに見えるが実はそうではなく、奥行きが
あり、何よりも本の匂いにあふれ、規則性があるかと思えばそうでもなく、乱雑そう
に見えて、実は計算されつくした所も見え、とにかく一日居ても飽きない、本のディ
ズニーランドと言っても良いくらい楽しい場所なのである。

私はPOPなどの拡材と呼ばれる宣伝用の厚紙を駆使して売り場を作っているお店もも
ちろん好きなのだが、ここにはそれがない。いやないのではなく、それぞれの本がそ
の役割も演じているのである。
例えば、水木しげるの本の隣には井上円了の『妖怪学講義』があったり、澁澤のごっ
つい幻想文学の隣にはエルンストやパニッツア全集があったり、『月と六ペンス』の
隣には地球の歩き方シリーズ『タヒチ』があったりと、その陳列がPOP以上に目をひ
くのである。よくぞこんな本見つけてきたなあと思うものもたくさんある。もうそう
なると時間も何も関係なくなり、博物館を巡っているような幸せな気分になれるので
ある。

あとすごいのは文庫棚。そもそも岩波や河出、ちくま、講談社文芸文庫など、
一癖も二癖もあるラインナップが続くが、注目したいのはその配置。一番奥の
趣味の棚の近くにそれらの文庫があるものだから、店頭からの陳列と蔵書の妙に
頭が洗脳されてきてしまい、文庫棚に到達した時の期待感がハンパないのである。
もう表情は緩みっぱなし。密かにニヤけてしまうのだ。棚什器もあたたかみのある
木材を使っていて、かすかに感じる湿度が心地いい。ふと気がつくと文庫を両手で
愛でている自分がいるのである。

もう幸福感いっぱいで何冊か買うべき本を携えながら、レジに行く。
そこでまた衝撃が走る。なんとレジ前に人文思想のコーナーである。
通常、レジ前と言えば衝動買いしやすい手軽な文庫やベストセラーが置かれる場所。
「なんでやねん」とツッコミを入れながらもフーコーを手にとってしばらく躊躇する
のだが、もう心は夢心地。感謝の念で買ってしまうのである。それはスーパーでお会
計をする際にレジ横のお菓子をついついカゴに入れてしまう感覚に似ている。

ある調査によると国民の53%が1ヶ月に1冊くらいしか本を読まないらしい。
ただ今日紹介した書原さんのような本屋さんもある。普段本を読まない人でも、まず
は書店さんの中に入り、店頭にあるたくさんの本の中から一冊を選ぶという楽しみを
味わえば、もう少し国民読書量は違ってくると思う。本屋さんはこんなにも楽しい場
所なのだから。

(営業部・田丸慶)

◎書原 霞が関店
東京都千代田区霞ヶ関3-2-3
霞が関コモンゲート官庁棟アネックス1階
電話:03-3595-8045
http://www.geocities.jp/books_shogen/tenpo.html

(初出:『かわくらメルマガ』vol.53 2014/8/25)
熊本に長崎書店という老舗の書店がある。近年様々な企画で話題になることも
多い書店なので、熊本界隈ご在住の方はご存知の向きも多いかもしれない。

私が以前営業で九州地区を担当をしていた頃、そちらの社長(店長兼務)の長
崎健一さんには大変お世話になった。年が近い先輩ということもあり、なんと
なく気安くて、伺うたびに食事などご一緒させていただいて、長崎書店の今の
こと、熊本の街のこと、商店街の現在など、タメにも刺激にもなる話をたくさ
ん伺ってきた。

長崎書店は、創業1889年(長い社史においては西南戦争の戦火に罹ったり、熊
本大洪水にみまわれたり...参照:長崎書店社史 )。
長崎健一さんは四代目社主ということで、2009年に社長に就任されている。

そう聞くと、なんともいかめしい重厚な様子の書店が連想されそうだが、実際
の長崎書店は小ぶりで、いかにも使い勝手と居心地が良さそうで、適度に洗練
された雰囲気の街の書店である。店内をそぞろ歩くと、各コーナーでは折々の
ちょっとしたフェアや、担当店員さんからのオススメ本や、児童書コーナーの
洒落たディスプレイなど、そこかしこに楽しい(本好きを捕える危険な)ワナ
が仕掛けてあって、ついつい立ち止まってしまう。落ち着いているのに、賑や
かである。空間がさざめきに満ちている。

熊本界隈で活躍する作家、アーティスト、著名人ら本好きが選ぶ文庫100冊フ
ェア「La! Bunko」など、地域を巻き込んだ取り組みで文化発信の静かな中心
地ともなっているようで、全国的にもそのような目立ったアクションを起こし
ている書店はそう多くなく、出版社の者としても長崎書店の動向から目が離せ
ない。(そんな長崎書店も一日にして成ったわけではなく、長崎さんが店を継
ぎ、大リニューアルを行うにあたって参考にし、教えを乞うたのは、福岡の粋
な書店・ブックスキューブリックの大井社長であったとか、書店を巡る物語は
連綿とつづく...)

いま長崎さんは、商店街の同世代経営者の方たち(ほとんど皆幼なじみだとか)
とともに、商店街全体として接客の価値観を共有し、ひとつのブランドを作り
上げていく、というプロジェクトを推進されているそうで
こちらにお写真も。かっこいいな~)、
これまた現代的かつ革新的な取り組みだと思う。

(ファンなので)長崎さんのことばかり述べてしまったが、長崎書店を訪れる
人が今日も安らぎと知的興奮を同時に享受できるのは、スタッフの方々の弛ま
ざる創意工夫と真心ある接客の賜物であることは言うまでもない。

熊本界隈にお住まいの幸福な方々は今日も新しい出会いを求めて訪店していた
だき、遠方ですぐにそれが叶わない方はご旅行の際、ぜひ旅程に加えていただ
けたらと思う。きっと旅の素敵なアクセントになる。

(営業部・小尾友宏)

◎長崎書店
熊本県熊本市中央区上通町6-23 長崎書店ビル 1F
電話:096-353-0555
http://nagasakishoten.otemo-yan.net/

(初出:『かわくらメルマガ』vol.48  2014/6/10)
お暑うございます。焼けるような熱気が列島を覆い尽くしておりますが、こう
いう季節の書店さんは救いの場、暑さに耐えかねてちょっと逃げ込んだつもり
が、あちらを手にとり、こちらに目をやり、気づけば数冊、小脇に抱えてレジ
に並んでいる...なんてご経験も、皆様おありではないでしょうか。夏こそ書店
さんの季節、といっても過言ではありません。

さて、好評いただいております当コーナー、今回担当・片山の遅筆により大変ごぶ
さたしてしまいました。お待ち下さっていた会員の皆様には、心よりお詫び申
し上げます。このたび紹介させていただくのは、東京都内の書店さん、
BOOKS隆文堂さんです。

東都西方、西国分寺。文化の香り高いJR中央線と、近年開発の進むJR武蔵野
線が交わる郊外駅です。ゆるキャラ「にしこくん」のご当地と言った方が、ピ
ンとくる方もいらっしゃるかもしれません。駅のまわりは閑静な住宅地。地域
住民でにぎわう駅前は、20年以上も前からあるショッピング・モールを中心
に商店街が広がり、隆文堂さんのお店も、このモールの中にあります。

エスカレーターで2階へ上がると、まずは新刊台とフェア・コーナー。そこか
ら左手に、エスカレーターをぐるっと取り囲むように、約150坪のお店が広が
っています。雑誌を中心に、児童書・コミックを比較的広めにとり、文庫もた
いへん充実の品揃え。ご近所の主婦、学生、お年寄りでお客さんの絶えない店
内はまさに、古き良き「ザ・街の本屋さん」のたたずまいです。

地元の特集がある雑誌や、地元を題材にした書籍なども精力的に扱っておられ
ます。こちらは雑誌コーナーの一角。中央線は地域柄、地元発行のミニコミ誌
のようなものも多く、他地域の書店さんではなかなかお目にかかれないタイト
ルも並びます。いわば文化の地産地消。沿線住民でなくとも、つい興味をそそ
られます。

もうひとつ、強烈な印象で初めてのお客さんの度肝をぬくのが、エスカレータ
ーの壁面ガラスいっぱいの「にしこくん」。でっかいのなんの。そしてその手
前では、フェア台を埋め尽くす『ブンブンブック にしこくん』(講談社刊)。
レジに近づけば、書籍以外にも携帯ストラップやタオルなど、「にしこくん」
グッズが勢ぞろいです。

実はこれ、隆文堂さんの高橋社長が「にしこくん西国分寺サポーターズクラ
ブ」の会長もつとめておられるのです。「ご当地だから」と率先して応援して
こられた経緯があり、お客さんの中にはこの「にしこくん」を目当てに、遠方
からはるばる訪れる方もいらっしゃるとのこと。ゆるキャラ恐るべし。もちろ
んファンブックは、お店の週間ベスト10にも常連で、たいへん好調な売行の
ご様子です。

「地域密着」にもいろいろな形がありますが、これぞまさにワン&オンリー。
「近所の本屋さん」としてのニーズにきちんと応えながら、「ここでしかでき
ないもの」もビシッ!と打ち出していく姿勢には、地域からも厚い信頼が寄せ
られているように感じます。もしお近くに御用の際はぜひ、ぶらり途中下車さ
れてみてはいかがでしょうか。「にしこくん」のゆる~い笑顔が、訪れる皆様
をお待ちしております。

(営業部・片山郁)

◎BOOKS隆文堂
Twitterアカウント
東京都国分寺市泉町3-35-1 西国分寺LEGA内
JR中央線西国分寺駅南口すぐのビル内
tel: 042-324-7770
営業時間 10:00~22:00 定休なし

(初出:『かわくらメルマガ』vol.21 2013/8/21)
私が札幌市郊外のくすみ書房さんを初めてお伺いした時に受けた印象は今でも
忘れられない。

すでに「(なぜだ!)売れない文庫フェア」(もちろん河出文庫もラインアッ
プにいれていただいていた)、「本屋のオヤジのおせっかい、中学生はこれを
読め!」などの企画で業界内外で話題になっていた。
直接訪問してみるとイメージが膨らみすぎていたためか思ったよりこじんまり
した店舗であったが、今まで訪問した数百の書店にはない形での、月並みな言
葉であるが"温もり"を感じた。まさにその発信源は壁面の棚に展開された「中
学生はこれを読め!」のコーナーだった。

先に話題になっていたので書目リストぐらいは目を通していたが、実際に手書
きの統一オビが巻かれた新旧織り交ぜたラインナップには、直球ど真ん中の、
潔いかつ切なるメッセージが現れていた。ネット書店や大型書店ではなしえな
い、地域に密着した、血が通った空間でのみ実現できる仕事なのだと思う。
「これを読め!」「君たちを守りたい」といってくれる書店さんを、本屋のオ
ヤジを、身近に持っている札幌の子供たちはなんて恵まれているのか、と勝手
に思った。
そこには地域の書店さんならではの裸のメッセージと手渡しの温もりにあふれ
ている。それから何度も通っているが、そのスタンスは常に変わらない。

業界が揺れている。くすみ書房さんも例外ではないらしい。

以前に比べるとネット書店、中古店、図書館、そして電子書籍とユーザーの選
択肢も格段に増えた。しかし、こんな発信力があって素敵な空間を作り、温も
りを持って本との出会いの場を演出してくれる書店さんは地元の子供たちにと
って、読書人にとって、また業界にとっても、とても貴重だと思う。応援した
い。

(営業部・七澤博史)

◎くすみ書房
北海道札幌市厚別区大谷地東3-3-20 CAPO大谷地
地下鉄東西線大谷地駅隣接
tel: 011-890-0008
営業時間: 10:00~22:00 年中無休 

*2005年10月にくすみ書房さんが開催した「河出文庫の売りたいフェア」の
模様。
「河出文庫 売りたい文庫フェア」
http://twitpic.com/cyw56w

(初出:『かわくらメルマガ』vol.11 2013/6/25)

今回より、営業部から河出クラブの皆さんに全国の書店さんをご紹介するというコーナーを始めます。

第一回目の今回は河出クラブにご加入いただいている方で、名古屋方面にお住
まいの方ならきっとご存じのお店、"ちくさ正文館本店"。

大きな道2本にはさまれたこちらのお店、それぞれの大通りに面して2つの入
り口があります。
一方の入り口から入ると、雑誌やビジネス書などが置かれた一見して普通の町の本屋さん。
もう一方の入り口から入ると思わず深呼吸したくなるような、しんとした、けれども静かな熱気に満ち満ちた空間が広がります。絶対に手が届かないであろうところまで、みっしり詰められた本・本・本。名古屋界隈で文学・人文・芸術好きを自認する方ならおそらく知らない方はいないであろう名店です。

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名店たる所以はその圧倒的な品揃えと、何をおいてもこのお店をこのお店たらしめている名物店長の古田さん。
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本屋さんは、本を売るだけの場所じゃない、本来町の情報発信地であるべきとは、古田さんの言葉ですがその言葉どおり、店内中に今後刊行される注目新刊のチラシ、公開間近の映画のポスター、演劇、ライブの情報が所狭しと張ってあり、それを眺めているだけでもどんどん時間がたってしまいます。


そして今回私のお邪魔した日は、店内で名古屋造形大学の学生さんが授業で作成したという豆本の展示が行われており、その様子を作成者の学生さんと大学の先生を呼んでお店からCBCラジオが生中継で放送という日。夕方の放送に向け、店の脇ではラジオ局の方がせっせとアンテナを設営しておりました。
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まさに、本を買う場だけではない、町の発信基地!近所にあったら三日に一回は行ってしまうのだろうなというお店です。名古屋界隈にお住みの方、名古屋観光で時間がある方、是非とも足を運んでみてください。必ずや新しい発見と、思わぬ出会いがあるでしょう。うっかり散財と予期せぬ時間の経過にはご用心。


今後も営業部より全国各地の面白い書店、名物書店員さんを紹介していきたいと思います。どうぞお付き合いください。

(営業部・白井靖子)


ちくさ正文館本店

愛知県名古屋市千種区内山3-28-1
JR中央線千種駅より徒歩3分
地下鉄東山線千種駅4番出口より徒歩3分
tel: 052-741-1137
営業時間 10:00 〜 21:00(日・祝日は20:00まで)

(初出:『かわくらメルマガ』vol.11 2013/5/14)

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