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2016年3月の記事一覧

Twitterフォロワー数8万人超のヴィジュアル系バンドマン、煉(れん)さんが助けた
赤ちゃん猫・虎徹(こてつ)の成長記録が待望の写真集になりました。
2/23放送のテレビ、TBS系『生き物にサンキュー!!』にふたりが登場したのをご覧に
なった方も多いかもしれません。

煉さんと虎徹の出会いは昨年の夏の深夜。煉さんの自宅の庭に生後まもない赤ちゃん
猫が突然現れました。

目も開かず、へその緒のついた状態で、たった一匹で鳴いている手のひらサイズの赤
ちゃん猫を助けるため、煉さんはTwitterで「お母さんどこ行ったの?どうしようこの
子 誰か教えてくれ」とつぶやきます。そのツイートが多くの人に拡散され、生まれ
たてほやほやの赤ちゃん猫とロックなヴィジュアル系バンド男子の異色すぎるコンビ
が話題に。

バンド活動の傍ら、初めてのミルクや目が開いた様子もリアルタイムでツイートし、
一生懸命赤ちゃん猫を育てる煉さんの元には、たくさんの応援メッセージが届くよう
になりました。

猫雑誌やテレビにも出演し、甘えん坊でヤンチャな虎徹と、愛情深い煉さんのファン
になってしまう人が続出しています。

この本ではそんな生後3日の奇跡の出会いからこれまでの、煉さんの献身的な子猫育て
の様子をかわいい写真とともに紹介します。
家猫専門カメラマン・ネコグラファー(R)の前田悟志さんによる、大きく立派に成長中の
こてっちゃん撮り下ろし写真や、ファン必見の煉さん作「虎徹4コマまんが」、愛情
たっぷりの直筆メッセージも収録。
見ているだけで幸せな気持ちになれる、心温まる写真集です。

すでに本を手に取ってくださった方からは、虎徹ちゃんのかわいさはもちろんのこ
と、ふたりの心温まる関係に感動した、などのあたたかいご感想をたくさんいただい
ています。これから読んでくださる方もぜひ、ご感想をお寄せください。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
THE BLACK SWAN 煉『煉と虎徹

THE BLACK SWAN 煉さんのtwitterアカウント

(初出:『かわくらメルマガ』vol.98 芥川賞作家・藤沢周によるもう一つの巌流島 『武蔵無常』待望の刊行!)
高嶋哲夫は、警鐘を鳴らす。首都移転の重要性を問う『首都崩壊』、大地震と津波を
予見した『M8』『TSUNAMI』、パンデミックによる首都封鎖を描いた『首都感
染』、原発の問題に切り込んだ『メルトダウン』......どの作品も極上のエンターテイ
ンメントでありながら、私たちの身体の奥深くに危機意識を刻み込む。

そんなシミュレーション&パニック小説の第一人者として名高い高嶋氏が今回私たち
に体験させてくれるのは、まさに「究極のシチュエーション」ともいうべき状況だ。

日本の脳研究の最前線を走る医師・本郷を襲った突然の自動車事故。気付けば彼は、
一条の光もない闇の中に横たわっていた。「死」という文字が、本郷の脳裏を過る。
「死んだのだ。僕は死んでいる。(中略)では僕は何だ。何なのだ。魂が病室に留
まっているとでもいうのか。」ーー一度は覚悟した「死」の現実......しかし、彼は気
付いてしまう、自らが置かれている衝撃の状況に。K大学医学部脳神経外科病棟三〇
五号室の水槽の中で、「彼」は「脳」だけとなり<生かされて>いたのだ。

医学は日進月歩の進化を遂げている。だとすれば、このシチュエーションを、誰が
「現実味がない」と言えるだろうか?
本郷の仲間であり同僚の医師たちは、「脳」を前に問い続ける。「これで果たして、
生きているといえるのか......「人間における『死』とは何なのか?」と。
これは、医学の奇跡か、それとも罪か?
生と死の境界とは? そして人間は何を持って人間と言えるのか?
「人間とは何か?」という本質的な問題に挑んだ、前代未聞の傑作がいま、誕生し
た!

* * * * *

と、いつも以上に(ある意味で)ディーブな設定ではありますが、そこは高嶋さん、
極上のエンターテインメントであり、「命」を巡る感動作となっています。

さらに言えば、舞台がほぼ「K大学医学部脳神経外科病棟三〇五号室」からの一視点
であることも、作家としての大いなる挑戦作とも言えるかと思います。

「今日、僕は、脳だけになった」という衝撃的な帯が躍る著者の新たな代表作『浮
遊』を、是非、店頭でご覧下さい!!!

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
【関連書籍】
高嶋哲夫『浮遊

(初出:『かわくらメルマガ』vol.98 芥川賞作家・藤沢周によるもう一つの巌流島 『武蔵無常』待望の刊行!)
剣道を追い求める二人の男を描いたヒット作『武曲』。昨年行定勲演出で舞台化され
た『ブエノスアイレス午前零時』で話題の藤沢周さん。この作品で行定氏は先頃千田
是也賞も受賞しました。そんな藤沢さんの初の時代小説と言うことで、出版界は話題
騒然です。勝って、いかになる。殺して、いかになる......迷いと悔いに揺らぐ"もう一
人の武蔵"。己が殺人剣に倦みながら、剣を捨て、船の櫂を持って渡った"もう一つの
巌流島"を描き、鬼気迫る傑作です。担当編集からのメッセージをお届けします。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *

藤沢周は藤沢周平と名前が一字違いである。もちろんお二人は無関係で、藤沢周は本
名だ。この業界では、いつか藤沢周が時代小説を書くのではと言う熱い期待があっ
た。伝説の編集長寺田博氏もまた遺言のように藤沢さんにチャンバラ小説を書くよう
言い残した。藤沢さんがどのようにしてこの小説を書きあげたのかをドキュメント風
に綴ってみよう。


藤沢周は書きあぐねていた。執筆を決意してから10年近くが経っていた。あいだ
に、地元の道場で剣道を始めた。剣道小説『武曲』も書き、ヒット作になった。順調
に段位を重ね、現在四段。高段者となった。藤沢は、試行錯誤を重ねながらすでに冒
頭を書き始めてもいた。しかし、執筆はぱたっと止まったのだ。

藤沢には武蔵の怒りの声が聞こえていたのだ。「お前は許さん」。武蔵の声が絶えず
聞こえてくるのだ。藤沢はそのたびに、何度も書くのをやめようと思った。自分自身
の抱える闇、はぐれている部分と向き合うためにこれを書き始めた。けれども、それ
を武蔵に託して書いていることに対し、「俺を使って書きやがって」と武蔵が言って
いるのを感じていたのだ。

父は高名な柔道家。自身も大学まで柔道に励んだ。その藤沢が剣の道にはまったの
は、ひょんなきっかけだった。息子の付き添いで行った道場でおじいさん先生から声
をかけられ竹刀を振ってみた。すると未経験の藤沢に先生は「あなたやってたね?」
と声をかけてきた。否定すると「やったら大変なことになるよ」と勧められたのだと言
う。

その気になった藤沢は、早速防具を購入し道場に通い始める。初段になったら一年修
行期間を経て二段を取り、二年の修行期間を経て三段。三年の修行期間を経て四段ま
で、最短で来た。やはりただ者ではなかった。そんな藤沢が剣の道に感じる深みと比
例するかのように、藤沢の執筆に対する武蔵の怒りは、強くなっていった。

藤沢には一乗寺下り松で吉岡一門が頭領に立てた幼い子どもを武蔵が迷わず切り殺し
た事への怒りがあった。藤沢もまた武蔵を許せなかったのだ。武蔵は、剣をどういう
ふうに求道に転化させるかを考えていた筈だ。しかし、全然違う部分で、獣のような
悪魔のような何かが彼に剣を振るわせている。藤沢がそれを書こうとしていること
を、武蔵は嫌がっているのだ。

そんな藤沢にある日、ようやく赦しが訪れる。僧の愚独を斬り殺す場面を書いていた
ときの事だ。武蔵が斬ったのは五輪塔だと気づいた時、ようやく藤沢は武蔵の許しを
得た、と感じた。藤沢は喜びのあまり、思わず書斎を出て階段を駆け下りた。

多くの作家が語るところによれば、作家は小説を書き終えると程なくして、あれほど
生き生きしていた登場人物や作品の世界は、幻のように消え去ってしまうと言う。し
かし、今回藤沢のもとにはいまだ宮本武蔵の存在感が濃厚に残っているというのだ。
これはいかなることか。もしかすると、宮本武蔵は藤沢に、その先を書き継ぐよう
に、と伝えようとしているのかもしれない。

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *
【関連書籍】
藤沢周『武蔵無常

藤沢周『ブエノスアイレス午前零時』(河出文庫)

(初出:『かわくらメルマガ』vol.98 芥川賞作家・藤沢周によるもう一つの巌流島 『武蔵無常』待望の刊行!)
今年の1月からスタートした、フジテレビの月9ドラマ「いつかこの恋を思い出して
きっと泣いてしまう」。
幼くして母親を亡くし、北海道で養父母に厳しく育てられた杉原音と、祖父と二人で
過ごしてきた福島の土地を買い戻すために上京した曽田練。東京を舞台に、彼らを中
心とした6人の若い男女が、辛い過去を抱えながらも前を向いて精一杯生きようとす
る姿を描いたラブストーリーです。

切なくて胸が締めつけられる、と、さまざまな年代の男女から注目を集める本作の脚
本を手がけたのは坂元裕二さんです。坂元さんはこれまで、フジテレビ系「東京ラブ
ストーリー」や、向田邦子賞を受賞した「わたしたちの教科書」、芸術選奨新人賞の
「それでも、生きてゆく」、橋田賞受賞の「Mother」に、日本民間放送連盟賞最優秀
の「最高の離婚」「Woman」など、視聴者の心を揺さぶる数多くの名作を世に送り出
してこられました。加害者家族と被害者家族の葛藤、シングルマザー、児童虐待な
ど、最近では社会問題を根底にした作品も多く手掛けられてきた坂元さんによる久々
の本格ラブストーリーである本作「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」
にも、若者の貧困やシビアな現実が丁寧に描かれています。

登場する男女6人は、東京という土地で、それぞれが仕事や家族、生活の中で困難に
直面し悩みや痛みを抱えて生きる中で、誰かを好きになり、失恋し、傷つきます。で
も、その誰かを好きになった思いを支えにして必死で生きる彼らの姿は眩しく、まっ
すぐで切ない思いに毎回惹き付けられてしまいます。そして彼らの発する言葉ーー坂
元さんが紡がれる美しくて芯をとらえた台詞に、思わず涙してしまうのです。

「ずっと、ずっとね、思ってたんです。わたし、いつかこの恋を思い出して、きっと
泣いてしまう。って。わたし、わたしたち今、かけがえのない時間の中にいる。二度
と戻らない時間の中にいるって。それぐらい、眩しかった。こんなこともうないか
ら、後から思い出して、眩しくて、眩しくて、泣いてしまうんだろうなって」(「第
5話」の音の台詞より)

物語はいよいよ佳境に入ってきました。放送も残すところあと2回、5年もの間音信
不通になっていた練と音との再会、すれ違う6人の恋はどうなっていくのでしょう。
そして彼ら全員に幸せは訪れるのでしょうか。

時にクスッと笑えて、時に心に深く入り込んでくる珠玉の台詞をもう一度味わえる、
本ドラマのシナリオブック第1巻(第1話~第5話までを収録)が、現在好評発売中
です。そして、3月末には、完結編となる第2巻も発売されます。文字で読むと、新
たな発見や感動が広がる、このかけがえのない物語を、みなさんに改めて味わってい
ただけたら嬉しいです。
(編集担当)

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【関連書籍】


【ドラマ公式サイト】


(初出:『かわくらメルマガ』vol.97 かわくらセミナー「〈日本〉を考える」第3回 講師:大澤真幸 募集開始!)
<野口日出子先生のこと>

「アジがおろせればクジラだっておろせます!」は野口先生の口ぐせ。あ、あの・・
クジラは哺乳類では、などと細かいことはいわないで。アジで魚の基本構造をしっか
り覚えれば、どんな魚にも応用できますよ、と先生はおっしゃるのです。

ある日の先生宅。私たち編集スタッフは料理教室がはじまる直前におじゃましまし
た。玄関には築地から届いた大きな発泡スチロールがいくつも積んであります。ふた
を開くと巨大なマダラが! おなかがものすごく膨れています。「鱈腹(たらふく)
の語源がわかるでしょ。ほらほら、皮に触って。深海魚だからぬめっとしてるわね。
とっても傷みやすいから気をつけて」切り身のタラしか見たことのない私たちはこの
巨大魚に大興奮。おなかに触ってみたり、でっかい口を開けてみたり。

次の箱から出てきたのは、ひえっ、このながい口ばしはなに? 1メートル以上は
あろうかというヤガラです。しかも、からだ3分の1くらいは口。「口が開くのは
先っぽの数センチだけなのよ」ほんとだ! そして、先生が敬愛される魚類学者、阿
部宗明氏編纂の魚類図鑑を開いて、お魚講座がはじまります。水族館より断然おもし
ろい!!

しかし、このでかい魚たちを、生徒のみなさん、さばくんですか?「もちろん。私の
生徒はハモもアンコウもきれいにさばきますよ」すごい・・としか言えない私たちで
した。

「まずは調理する素材をよく知ること」と先生はいつもおっしゃいます。「たとえば
魚だったら、その構造や生態などがわかれば、その魚がいちばんおいしい季節がわか
り、その魚にふさわしい調理法も理解することができます。野菜やお肉でも同じこ
と。そうやって覚えた知識は応用がきくし、決して忘れません。理由を知ることがお
料理ではとてもだいじ」

いつも探究心と好奇心に満ち、疑問に思ったらすぐに確かめる、それも、書物だけに
頼らず、現場に行って自分の五感で確かめる、これが若いころから今に至るまでの先
生の基本姿勢。築地「おさかな普及センター」の名誉館長もされていた阿部宗明氏に
ついて市場を歩き回ったり、阿部氏といっしょに漁場の見学をしたり。そうして得ら
れた食材情報は、私たちにとって目からウロコのものばかりです。

本書にはレシピに加えて、この貴重な食材情報をたくさん盛り込みました。そして、
先生の至言も随所に! 先生の言葉は、料理に役立つことはもちろん、人生の指針に
したいような名言です。(帯ウラにも先生語録を載せましたのでぜひお読みくださ
い!)

赤が大好きな先生。1年以上に及ぶ撮影中、ただの一度もグチをおっしゃることがな
かった先生。愛弟子の阿川佐和子氏曰く「笑いながら怒る」先生。100歳の弟子に
83歳の先生という奇跡のような教室が、末永くつづきますように。そして、長年の
教室の集大成である本書が、末永く読み継がれますように。                    
(編集担当)

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野口日出子『いま伝えたい和食

(初出:『かわくらメルマガ』vol.97 かわくらセミナー「〈日本〉を考える」第3回 講師:大澤真幸 募集開始!)