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★増田寛也『地方消滅』(中公新書)
   
今年始めに偶然読みました。空港などでよく売れていたのが理解できます。
首都圏に一極集中することの社会的リスクはかなり高く、その見事な象徴が北海道で
あり札幌。
将来「東京圏」に住むのが怖くなるショッキングな1冊でした。
(総務部 K:当社の管理業務を担当。)

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★小峯 隆生・筑波大学ネットコミュニティ研究グループ『「炎上」と「拡散」の考現

レビュー:「ネットで炎上」という表現、いまや身近なものですが、実際の渦中に立
ち会える(あるいは立ち会ってしまう)ことは非常にまれです。意外と知らないその
現場で、具体的にはいったい何が起こっているのか―この研究チームは Twitter や2
ちゃんねるの書き込みを、人力で(!)ひとつひとつ読み、そのコメントを定量化・
数式化していきます。いくつかのパターンを俯瞰した時に明らかになる、意外なほど
クラシカルな、その傾向とは?いくら技術が進歩しようと、人間はやっぱり人間なの
だなあと感嘆せずにはいられない、とても興味深い内容でした。論文らしくない、軽
妙な語り口も読みやすくて好印象です。
(営業部 K:書籍の配本担当です。主に実用書と、文芸書の一部を担当していま
す。)

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★清水浩史『秘島図鑑』(河出書房新社)

自分が担当した本を挙げさせていただきます。島国・日本なのに「島」のことって何
も知らないな...というところから始まった企画でしたが、秘められた「秘島」の歴史
と「ポツン」とした佇まいに魅了され、気が付けば行けない島々に思いを馳せる「大
人の冒険の書」になってました。楽しんで制作した本なので、その思いが伝われば嬉
しいな。
(編集部 I:自分の知りたいこと、読者に楽しんでもらえることをモットーに本を編んでおります。)

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★ナショナル ジオグラフィック 編『ナショジオが行ってみた 究極の洞窟』(日経ナ
ショナルジオグラフィック社)

日本三大洞窟はもちろん、遠くヴェトナムの鍾乳洞も訪れた私がお勧めするのは、想
像を絶するスケールの地下世界に圧倒される写真集です。ちなみに私のお気に入りは
福島の入水洞(Cコース:要予約)です。ろうそくを手に真っ暗闇を探検できます。

【もう1冊】
★サイモン・シン 青木薫 訳『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)

だいぶ昔のベストセラーですが、今読んでももちろん面白い。数学者の人物伝、人間
ドラマとしても楽しめます。
数学の本なんて難しいのかとおもいきや、読み始めると止まらず、トイレにも持ち込
んでしまうこと請け合いです。
(編集部 K:鳥が好きな翻訳書の編集者。)

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★谷川直子『四月は少しつめたくて』(河出書房新社)

これから先、四月になったら読みたくなるで賞を贈りたいです。
「ことば」に傷ついたことがある人みんなに読んでほしい、
とても優しくて、とても厳しい小説。
(広報課 S:営業部で企画広報&書店さんへの営業してます。)

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社)

水・粉・砂糖・塩・顆粒酵母を混ぜて、10分こねて、1~2時間寝かせて、鍋で焼
く。それだけでホカホカのパンができる。意外とうまい。慣れると速い。僕のDIY的後
半生の幕開けを告げる、道標としての一冊。MAY THE KOBO BE WITH YOU!
(営業部 O:生協や美術館などの営業担当してます。)

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★岸政彦『断片的なものの社会学』(朝日出版社)

2014年6月、東京都議会の本会議において、ある女性議員に対し「産めないのか」と
いうヤジが飛び、後日大きな問題となった。この模様は録画されており、テレビやラ
ジオで繰り返し流れた。このヤジはもちろん言語道断の酷いものなのだが、それ以上
に気になったのは、ヤジを飛ばされた女性議員がその時そのヤジに対して笑ったよう
に見えたことだった。私の見聞きする限りにおいてヤジを問題視する人は多かった
が、その女性議員が笑ったことに対して時間をかけて何かを語ろうとした人はいな
かった。ただ一人をのぞいて。

その一人が、朝日出版社のサイトで「断片的なものの社会学」という連載を執筆して
いた岸政彦という人だった。その時の記事は今でも読むことができる。

この記事を読んでから、女性議員がヤジに対して笑顔を見せたことをまた考えた。当
たり前のことだけれど、彼女がなぜ笑顔を見せたかについて、正確に知ることは出来
ない。それでも彼女の心のうちを考える。今でも時々考える。それで良いのだと思っ
た。

どんな人間も、その人間なりに毎日を生きて、生きた場所には物語が生まれる。
でもその日々は、その人にとってあまりに自明で、本人ですらそこにある物語に気づ
かない。ましてやそれが他人の目に触れることはあまりない。
そんな誰かの物語の断片を掬いとることができたこの本は、控えめに言って小さな奇
跡の結晶だとしか思えない。100年後も読み継がれてほしい、震えるほどの名著。
(営業部 T:わらび餅が好きです。おすすめは京都・洛叉庵です。)

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★坂東三津五郎 著 長谷部浩 編『坂東三津五郎 歌舞伎の愉しみ』(岩波現代文庫)

2月に亡くなった十代目坂東三津五郎丈による歌舞伎案内。6月に文庫化。ご本人の
経験を交えて、演目や見どころ、歌舞伎の今昔、役者の苦労や喜びなどが、非常に分
かりやすく語られる。芸談と解説書が一体となった稀有の本。
(編集部 I)

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★ミシェル・ウエルベック 大塚桃訳『服従』(河出書房新社)

フランス社会の不安感を見事に織り込んだ痛烈な作品。
筆力が巧みで、細部がいちいち面白く読めるのはウエルベックならでは。とはいえ、
とても対岸の火事とは思えないところが恐ろしい。同じウエルベックの『プラット
フォーム』も結末は衝撃的。
(編集部 T:不本意ながらフランスが遠のいている編集者。)

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★ルイス・ダートネル 東郷えりか訳『この世界が消えたあとの 科学文明のつくり
かた』(河出書房新社)

「もし世界が崩壊したあとに、もう一度文明を作るなら?」のキャッチで大反響だっ
たこの本。大量の技術と知見で今の暮らしが維持されていることにめまいがするは
ず。心から文明が維持されることを望みます。本当に崩壊したときは、この本だけで
は記述があっさりすぎてそのまま役立てるのは難しいでしょうが、必要な技術がなに
か、は書かれているので、文明的な我々はこの本を指南書にそれぞれの専門家を見つ
け力を合わせて生き残ることができるのでは。さらりと読むにはやや固い語り口です
が、それも説明書ぽくて良いです。

【もう1冊】
★あんこ『自家製酵母で作る毎日食べたいパンとおやつ』(河出書房新社)

パンのレシピですが、本質は酵母マニアの酵母との語らいの記録です。専業主婦が独
学で、レーズンやりんご、干し柿、いちご、トマトなど、こんなものから!と驚かさ
れるほど、なんでも酵母に生まれ変わらせる。その姿はまるで、森を歩き材料を探し
妙薬を作った魔女。経験と自然との語らいで得た法則ですが、人からみると魔法のよ
うです。
教科書で学んだのではなく、一から自分でやってみて得た知識だからか、その情熱に
はうっすら狂気すら感じます。自分で撮影したという写真の美しさも愛ゆえかと。


【もう1冊】
★ジョッシュ・ウェイツキン 吉田俊太郎 訳『習得への情熱―チェスから武術へ―
(みすず書房)

著者は映画『ボビー・フィッシャーを探して』のモデルにもなったチェスの神童。有
名になったことでの雑音から逃れる精神修養で太極拳を始めたところ、そちらでも国
際大会制覇レベルまで到達。2分野を修めた著者だからこそ気づいた法則は「優れた
競技者になるための内的技法は競技の種類によらず驚くほど共通している」こと。非
常に感覚的な気付きなのだけど、ロジカルに落としこむ思考力と説明力で学習法のビ
ジネス書としても使えるレベルまでまとめているのがすごい。つまり文章力も天才。
なにかの第一人者が、なにやってもすごいのはこういうことだったのかー! 
読後、すっかり啓発されたのはいいけれど各所に「○○を無意識に行えるレベルまで
到達し」とあるのに気づいてぐったり。天才になれるかは、何万時間費やしても平気
な、努力を厭わないものに出会えるかどうかが鍵のよう。彼の習得の過程を追体験し
ているかのような抜群に体感的な文章を楽しめただけでも面白い出会いでした。
(営業部 N:狂気を感じる本に惹かれます。会社では広報、大人の塗り絵事業担
当。)

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★山本義隆『私の1960年代』(金曜日)

著者は言わずと知れた元東大全共闘代表。弊社刊『民主主義ってなんだ?』の
SEALDsの活動も執筆の動機になったとのこと。昭和史のおさらい、科学技術の研究
現場と政治や国家との関係など私にとっては目からウロコの1冊でした。
(営業部 S:最近は訳あってよく大学研究室を回って営業しています。)

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学のために』(青土社)

社会学界隈で仕事をさせてもらっている編集者としては、あまりにも羨ましい企画。
見田宗介という「圏」の広がりの端っこに入れてもらいたくなること請け合い。本書
で気持ちを高めて、『定本 見田宗介著作集』へ。
(編集部 F:見田先生の授業、ちゃんと聞いておけば今頃......。)

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★李珍景 影本剛訳『不穏なるものの存在論』(インパクト出版会)

「取るにたらないもの」「粗末で卑しいもの」の特異性から哲学し、「迷惑をかけ
る」ことを肯定するという読む者を勇気づける驚くべき思考の書です。かつて独裁政
権に抗して捕らわれたこともある著者は、実は世界で一番大事なドゥルージアンのひ
とり。
(編集部 A:人文、カルチャーなど編集。)

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★アビー・バーンスタイン/矢口誠 訳『メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロード』(玄光社)

この夏「ヒャッハーー」と謎の雄叫びをあげた人も多いのでは。全人類(たぶん)に
エンタテイメントがもたらす最大級の感動の刻印を残した映画「マッド・マックス」
のメイキング本。あの謎の乗り物の仕組みが!愛と勇気と哀しみに満ち溢れた登場人
物たちの意外な背景が!読めば映画を観たくなる→観れば読みたくなる→観たくなる
→読む→観る→読→観の永久運動。この冬はBlu-rayとみかんとこの本で血湧き肉躍る
年末年始をお過ごしになることをオススメします。
(編集部 S:昼は悠久の書物に思いを馳せ、夜は国会前に佇む1年でした。)

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医者や薬は多くの人を救ってきた。しかし、新薬開発には多額のカネが動き、製薬会
社、厚労省、大学病院の癒着の温床になりやすいのも事実。少なくない薬害の犠牲者
を抹殺しようとする医療業界のウラを暴く、医療を信じる一般人こそ読むべき書。 
(営業本部 O)

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★ゲーリー・L・スチュワート/スーザン・ムスタファ 高月園子 訳『殺人鬼ゾディ

とある方面からはカリスマ視すらされる殺人鬼ゾディアック。"生き別れた実子"とさ
れる著者が、その正体に迫りゆく様は流石に緊迫感も執拗さも破格。人は時々人を殺
すし、たまたま人に殺されることもある、そんな逃れがたい現実に戦慄しつつも、ど
うにも面白くて読む手が止まらない一冊です。
(営業部 N:営業部で書類の壁に囲まれています。年末片づけます)

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★安倍夜郎『深夜食堂 14・15巻』(小学館)

新宿の、材料があれば何でも作って出してくれる深夜食堂で、いろんな人が出会う、
関係しまくりの物語。マスターのさりげないお言葉も魅力的。常連さんもいい味。女
性は滝田ゆうさんの絵柄にも似てたりして、まろやかないい線です。寝しなに読んで
いやされてます。
(編集部 N)

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(勁草書房)

「子どもを産んで国に貢献」することを公に、ためらいなく求めてしまう国に絶望し
か感じなくなった頃、出会った一冊。では、この国は、出産に至らない中絶と避妊を
どう管理してきたのか、まず明かされるのは、他国ではとっくの昔に廃れた母体への
危険が大きい「掻爬」手術が、日本ではいまだ主流をなしている驚きの実態!!! 
センセーショナルなレポートに止まらず、国内外の歴史研究を基に「生殖コントロー
ル技術」や、法と倫理の関係に丁寧に迫る画期的な本書。議論への一歩目を踏み出せ
るという希望をももらえた、女性男性ともに必読の書です。
(編集部 M)

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★村上春樹『職業としての小説家』(スイッチパブリッシング)

小説家になるとはどういうことか。しっかり村上さんが答えている。
さらにどうやって世界で読者を獲得するに至ったか、そこもかなり詳細に報告してく
れている。
マックス・ヴェーバーの「職業としての政治」を読んだ時と同じ?知的興奮は味わ
えます。
(編集部 T:翻訳書を主に担当しています)

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★須賀しのぶ『革命前夜』(文藝春秋)

本書は歴史ロマンであり、音楽ものであり、青春小説であり、そして最高のエンタメ
です!!主人公・眞山に大きな転機をもたらす天才ヴァイオリニストのヴェンツェル
が最高にくそ野郎かつクールで、彼の虜になること間違いなしです。
(営業部 Y:営業部で書店課にいます)

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山本七平『『空気』の研究』(文春文庫)

『空気読めよ!』の方の空気ですよ。読み返してみてやはりオモロイなと。
醸し出された『空気』に我々日本人がいかに支配されてしまうか、
また、『空気』に『水をさす』ことの難しさについて痛感させられます。
日本人論の名著。特に若い方に読んでもらいたい。
(総務部 I:会社の片隅で、ひねもすお金の勘定ばかりしていますが、実は数字が大の
苦手。)

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中村のん『70'HARAJUKU』(小学館)

高橋靖子さんのアシスタントも務めたスタイリスト中村のんさんが、友人の写真家た
ち(錚々たる面々!)に呼びかけ「(まだ何者になったわけでもない)ただの若者」
として青春を過ごした70年代原宿のストリートスナップを集め編んだ貴重な1冊。そ
の後有名になった人もそうでない人も平たく並んだページから、その時代の若者たち
の物凄い熱量が伝わってきます!
(編集部 T:普段は実用書&シルバー川柳など担当してます。)

(初出:『かわくらメルマガ』vol.91 創業130周年記念 かわくらセミナー「〈日本〉を考える」第1回 山本理顕 ×大澤真幸×木村草太 開催)

河出の2014年

◎『帰ってきたヒトラー 上下』ティムール・ヴェルメシュ著/森内薫 訳

『帰ってきたヒトラー』はヒトラーが、死んだことを忘れて現代ドイツに甦り人気芸
人になっていく、というトンデモ小説です。でも冷静に読むと彼は生前(前世?)と
同じ顔で、同じ主義で、同じ行動をしている。もし、本当にいまヒトラーが現れた
ら、私たち、このリーダーシップに熱狂してしまうかも......と、巧みな構造にぞっと
させられます。
このドイツでのセンセーショナル具合を、日本でも再現したい。そのため、特にタイ
トルは確定までいろんな意見が集まり、難航しました。原題は『Er ist wieder da』、
直訳すると「彼はまたここにきた」。怖い! 「名前を呼んではいけないあの人」み
たい! タブー感がよく表れている。直訳でもいいのでは?という案もありました
が、日本で「彼」と言っても「ヒトラー」は指さないよね? と却下。「歴史書みた
い」という意見で『私はヒトラー ただいま芸人売り出し中!』というオチを半分
言っちゃうタイトルに決まりかけたり激しく迷走しました。
河出での結論は、もったいぶらずに『帰ってきたヒトラー』。この本は大部分がコメ
ディだけど、コメディゆえに怖い、という構造。ヒトラーが帰ってくるって超怖いよ
ね、と、怖さに忠実に、ほぼ直訳方向に落ち着きました。原題と比べると名前を出す
なんて下世話かもしれませんが、宣伝の天才、ヒトラーのシルエットと名前は大変な
インパクトだったようで、発売1週間で重版決定、現在までに上下巻とも6刷と、最
近の翻訳小説では異例の人気作品になってくれました。(営業担当より)
...‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥...


◎村岡花子『たんぽぽの目』『腹心の友たちへ』など

 2014年の好きなテレビドラマ第1位「花子とアン」。わがままな作家・宇田川満代
先生が村岡花子を「みみずの女王」と呼ぶ場面をご記憶の方も多いと思います。『た
んぽぽの目』収録の「みみずの女王」を実際に花子が発表したのは70年ほど前。鴻
巣友季子さんは「一見愛らしい童話のようで、とんでもなくブラックなお話」と語っ
ています。
 花子の孫・美枝さん、恵理さんは「祖母の童話は古めかしいのでは」と気にかけな
がらセレクトに取り組みました。しかし心配は無用で、作品は高水準、なによりも日
本語が美しく丁寧、花子の人柄が伝わるものでした。
「小学2年生の孫が読書感想文を書きました」「5歳の娘に読み聞かせています」
等、年代を問わず多くの方からコメントが寄せられています。
『ぐりとぐら』の作者中川李枝子さんは子供の頃に、花子の童話を何度も繰り返し読
んだといいます。「あたたかな口調には無駄がなく、歯切れよく、物語が絵になって
見えます。ありきたりのお子様向け童話とは違うぞーと私は確信しました」ちなみに
中川さんは「くしゃみの久吉」が格別にお好きだったとか。プレゼントに最適。ぜひ
お手にとっていただければと思います。
 また、「花子とアン」には登場しなかった心あたたまるエピソードが詰まったエッ
セイ集『腹心の友たちへ』『曲り角のその先に』『想像の翼にのって』も。エッセイ
集にはこんな誕生秘話もあります。ドラマ放映中、書斎を整理していた孫の恵理さん
が見つけたのは、花子の手で「未発表エッセイ」と書かれた茶封筒。中にはびっしり
原稿が詰まっていました。この多くは『想像の翼にのって』に収録されています。
(編集担当より)
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◎『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』渡辺佑基(河出ブックス)

第68回毎日出版文化賞・自然科学部門を受賞、11月27日に授賞式が行われました。
編集担当者(私)にとっても関わった本が受賞するのは人生初。受賞スピーチで渡辺
さんが「一番嬉しいのは賞金ゲットです!」と冗談をかますも場内の静粛ぶりに肝を
冷やし、式後パーティーでは渡辺さんの前にできた他社の編集者の列(「2冊目はう
ちで」と!)におののき、師事される先生には「研究者と編集者の関係は、つかず、
はなれずでね!」と心得をお教え頂き(研究者は研究・論文執筆が当然ながらご本
業)、「受賞」を巡るあれこれ、大変勉強になりました。
著者のデビュー作、編集者も科学分野は新米ゆえ、まさに手探りの本作りでしたが、
制約なく研究の面白さをのびのびと書いて頂いた1冊です。研究者の日常が綴られた
渡辺佑基さんのブログ、宜しければご覧下さい。興味深いです!(編集担当より)
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◎『型なしタルト』渡辺麻紀

型がないと作れない「タルト」が、型を使わなくても作れる!
そんなカジュアルさがこの本の一番の魅力です。きっちり作り込まなくても、見ばえ
のいいものが1台ドン!と仕上がる。完成したときのテンション、切り分けるときのワ
クワク感がたまりません。
ですが、それ以上に...担当編集は著者・渡辺麻紀さんの食材の組み合わせ方にほれ込
んでおり、そこがこの本の魅力だと思っています。
撮影後に試食したときは勿論ですが、著者からメニュー案が届いたときの高揚感は言
い表せません。
味を想像して悶え、期待に胸をふるわせます。「え!小豆と抹茶とマーマレード...お
いしそう~(うっとり)」「ドライいちじくにブルーチーズ!ささささらに、ビーツ
とくるみ、はちみつまで?!盛り沢山!」「なすとひき肉(ふんふん...頷く)に、
ヨーグルトですって?!」...興奮冷めやらぬまま撮影に突入し、その熱量をとじ込め
た本になりました。手軽さと食の奥深さを両方楽しめる一冊を、どうぞご堪能くださ
い。(編集担当より)
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◎『イチョウ』ピーター・クレイン著/矢野真千子 訳

朝日、読売、毎日、日経の4紙制覇の効果もあって、3780円(税込)という高定価に
もかかわらず、よく売れています。あちこちで目にするわりには意外に知られていな
かった「生きた化石」と数々の試練に耐えて強靭に生き抜いてきた強さが、凝縮して
まとめられた各紙書評は、きっと新聞読者に精神的な何かを伝えたのだと思います。
悠久の時間に思いを馳せ、西洋より日本のほうが先に広がっただけでなく、鎖国時代
の長崎出島からヨーロッパに伝わったというおまけの話も、じつに夢があって、日本
人とイチョウの特別な関係に驚いたりもします。科学であって文化でもある本書の魅
力でしょう。(編集担当より)
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今秋、神奈川近代文学館で催された「須賀敦子の世界展」には、1万人をはるかに超え
る方々が入館され、大盛況のうちに終わりました。思い出ぶかい須賀さんの写真やお
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309253022/手紙、なつかしい書斎の風景の再現など、胸がいっぱいになった素晴らしい展覧会で
した。亡くなられた直後に涙にくれながら作った文藝別冊の追悼特集『須賀敦子 霧の
むこうに』から早や16年。今回新編集の文藝別冊『須賀敦子ふたたび』、文庫新刊2
冊は、きっと須賀さんの新たなファンを広げてくれることと思います。(編集担当よ
り)

※刊行中の「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」にも、須賀敦子さんの作品が収録さ
れます。
こちらもお楽しみに!
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◎『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)

発売から3ヶ月で15万部と売行き絶好調の深水黎一郎さん著『最後のトリック』。
表紙のデザインは多数のベストセラーを手掛ける鈴木成一さんによるものですが、実
はオビは広報課で作成しました。「読者全員が」の文字を広報課Nが、「犯人」という
文字を広報課Tが書き、最終的な文字の配置をその上司である広報課長がしたのです。
この本の面白さを直接伝える為に試行錯誤した結果、不慣れな手書きオビに挑戦した
わけですが、微妙な筆跡の違いをぜひ見比べてもらえますと嬉しいです。この本が出
る経緯については、瀧井朝世さんが書いてくださった、朝日新聞「売れてる本」の記
事もぜひお読みください。(営業担当より)
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◎『古事記』池澤夏樹訳(池澤夏樹=個人編集 日本文学全集)

校正者としては、とてもたいへんな仕事でした。脚註・固有名詞など、気を配らなけ
ればならない点がとても多い。とくに神様の名前の表記原則は難関で、連日見ている
うちに、夢の中で神様たちが輪舞するまでになりました。
と、思い返せばいろいろありましたが、様々な方々に助けていただき、なんとか形に
なりました。作業者としてはたいへんだったことも、読みやすいという評価をいただ
くのに一役買っているようで、すこし報われたような気持ちです。
まだまだ先は長く、傍註の入る巻もあります。校正者としての悩みは尽きませんが、
今後とも「日本文学全集」をごひいきに、見守って、楽しんでいただけますと幸甚で
す。(校正担当より)
...‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥...



田中康夫さんの小説『33年後のなんとなく、クリスタル』が売れています!1980年
発表のミリオンセラー『なんとなく、クリスタル』から、その後の33年間を書いた作
品です。発売が決まったとき、文藝賞出身の小説家、田中康夫さんの新作を、ついに
売れる!と、ふるえました。
まず、「なんクリが書かれた1980年って、どういう時代?」というフリーペーパーを
作成、配布しました。日本文学史上の事件である「なんクリ」が世に出た時代背景
を、今、あらためてフォーカスしました。また、田中さんのゴージャスな車に乗せて
いただき、発売前に31軒の書店を訪問し、文芸担当者にプレゼンを行いました。「一
番いい場所で売る!」「大きなポスターが欲しい!」など言ってくださる方がたくさ
んいて、手応えを得ました。
11月25日の発売から1ヶ月。これからまだまだ売り伸ばします!年末年始、ぜひ書店
に出かけて、見つけてください。ターコイズに箔押しの、きれいなカバーが目印で
す。(営業担当より)
...‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥...


◎『なんでもまる見え大図鑑』ジャクリーン・ミットン著/左巻健男 日本語版監修

先日、茨城県にあるアカデミア イーアスつくば店にて店頭販売に行って来ました!
12月20日の土曜日ということもあって販売ブースはこの図鑑を見たいというお客さん
でいっぱいでした。
この図鑑の対象学年は小学校高学年からですが、4歳~6歳の子に特に興味を持って
買っていただいたことにビックリ。12ページからはじまる宇宙の各項(つくば、だから
でしょうか)、恐竜のページに釘付けでお母さんが「他の本も見よう」と言っても聞き
ません。目をキラキラさせて図鑑を読む姿をみて、「日本の将来は安心だ」と思いま
した。(笑)
お母さん方に申し上げたいこの図鑑のいいところは圧倒的な情報量と今までどこもで
きなかった「なかみ」をCGで明らかにしたことです。少々文字も多く、難しくお感じ
になるかもしれません。ただ子供さんは日々成長します。文字がまだ全部読めなくて
もまずはヴィジュアルを楽しむこと。それでいいんです。それで興味がわいてだんだ
んと読めるようになります。この図鑑1冊あれば、中学校まで楽しめます。そんなな
が~く使える図鑑です。それで4600円はゼッタイお買い得。その子にとって永遠の1
冊になるはずです。(営業担当より)

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ちなみに今年は次のような賞も頂きました。

◎『想像ラジオ』いとうせいこう
紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30『キノベス!2014』第1位

◎『動きすぎてはいけない』千葉雅也
紀伊國屋じんぶん大賞2013

◎『マヤコフスキー事件』小笠原豊樹
第65回読売文学賞の評論・伝記賞

◎『スタッキング可能』松田青子
第4回 Twitter文学賞 国内篇 第1位

◎『国境 完全版』黒川創
第25回伊藤整文学賞

◎「五色の舟」津原泰水(河出文庫『11eleven』収録)
「SFマガジン」700号記念号の「オールタイム・ベストSF」で「五色の舟」が「国内
短篇部門」第1位

◎『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』全10巻 大森望責任編集
第34回SF大賞特別賞
第45回星雲賞自由部門

「星を創る者たち」谷甲州(NOVAコレクション『星を創る者たち』所収)
第45回星雲賞日本短編部門

◎『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』渡辺佑基(河出ブックス)
第68回毎日出版文化賞自然科学部門
http://mainichi.jp/shimen/news/20141103ddm001040216000c.html

(初出:『かわくらメルマガ』vol.62 河出の2014年号)