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2014年4月の記事一覧

アザラシやペンギン、クジラ、マンボウといった野生動物の体に小型カメラや加速度
計などの記録機器を付け、その生態を調べる研究手法「バイオロギング」。
近年、大きな注目を集めるこの手法によって、アホウドリは46日間で世界一周するこ
と、クロマグロは太平洋の端から端まで横断しまた戻ってくることなど、人間の想像
を超えた世界でダイナミックかつ自由に振る舞う動物たち本来の姿がわかってきたそ
うです。
この研究で注目される国立極地研究所の生物学者・渡辺佑基さんに、初の単著『ペン
ギンが教えてくれた物理のはなし』の刊行を記念して、特別寄稿していただきまし
た。
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『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』刊行に寄せて
渡辺佑基

皆さん、こんにちは。ペンギン、アザラシ、魚などの海洋動物を研究しています、渡
辺佑基と申します。このたび、私の研究やフィールドワークの経験をまとめた本が完
成しました。
海洋動物の動きは驚くくらいにダイナミックです。マグロは太平洋を横断してまた
戻ってきますし、アザラシは一時間も息をとめられます。なぜそんなことができるの
かという素朴な疑問からスタートして、進化の不思議を解き明かしていこうというの
が本書の狙いです。生物学というとどうしても、実験室で顕微鏡を覗いているイメー
ジが強いですが、こちらは電気や水さえ満足に使えない、大自然のフィールドから発
信する生物学です。
私は著者であるより先に、ポピュラーサイエンス本のいちファンです。だから以前よ
り、もし自分自身が著者になったあかつきには「こういうものを作りたい」という理
想像が、具体的にありました。それは研究例を羅列するのではなく、一本のストー
リーに沿ってするすると読める、楽しいものに仕上げることです。
この目的はそれなりに達成できたと自負しておりますので、どうぞ一度手に取ってご
覧ください。
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★河出ブックス『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』渡辺佑基●1400円

■著者プロフィール
渡辺 佑基 (ワタナベ ユウキ)
1978年生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。極域に生息する大型捕食動
物の生態を研究。東京大学総長賞、山崎賞を受賞。科学誌『Nature』でその研究が紹
介される等、世界の注目を集めている。

(初出:『かわくらメルマガ』vol.42 2014/4/10)