• Clip to Evernote
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第53回文藝賞 受賞作決定

第53回文藝賞は、選考委員の斎藤美奈子氏、藤沢周氏、保坂和志氏、町田康氏により、町屋良平氏の「青が破れる」に決定しました。受賞作・選評・受賞の言葉は、10月7日(金)発売の「文藝」冬号に掲載されますので、ぜひご覧ください。

町屋良平「青が破れる」(400字×107枚)

【内容紹介】
「健康がどうでもよくなった人間のすがすがしさと生きやすさを、わけてあげたいわ」――友人のハルオによると、彼の恋人のとう子はもう長くないらしい。ボクサー志望の秋吉(しゅうきち)はハルオから、これからも彼女の見舞いに行ってくれと頼まれた。しかもひとりで。「なんでおれが?」「入院してんねやから、かわいそやろ。見舞いいったれや」。
秋吉は、ときにとう子に言われるまま、病室のベッドで添い寝をする。ときに夫と子どものいる夏澄(かすみ)に呼ばれて、交情を重ねる。ボクシングジムではスパーリングの日々のなか、後輩ボクサー・梅生(うめお)から「秋吉さんは、すきになったら傷つけられるようなひとばかりすきになるから、かわいそう」と呟かれた。
そんなある日、秋吉の家のドアベルが執拗に鳴らされる。無言でドアを開けると、そこにはとう子が立っていた。「いこう、ハルくんも、まってるよ」その言葉に誘われるように車に乗り込んだ秋吉。ハルオととう子、そして梅生の四人を乗せた車は夜のなかをさまようように走り、いつしか湖へとたどり着くのだが......。
「おれはおれの思考を、ボクシングに捧げないと。生活を、感情を、捧げないと。いざというとき、『おれ』を越えた一個の『ボクサー』でいられるように」----生きることの不安とみじめさ、そしてひそやかに煌めく命......いま、四人の不定の生は、秋吉の体のなか、静かに、しかし激しく響き合う。
選考委員絶賛! 圧倒的に清新な文体で、哀しくも熱い生の衝動を鮮やかに切り取った、新たなる才能の誕生!

【受賞者プロフィール】
町屋良平(まちや・りょうへい)/男性
1983年、東京都生まれ。32歳。現在、会社員。東京都在住。