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編集担当者が語る、鎌田實『1%の力』ができるまで

皆様、「かわくら」メルマガのご購読をありがとうございます。
9月18日発売『1%の力』担当編集者です。
この本がどのようにして生を享けたのか。
この本の目指している地点はどこにあるのか。
この場をおかりして、その製作過程を振り返りながら、
担当編集者としての想いをお伝えします。

著者は、テレビや雑誌やCMでもお馴染み、
あたたかな笑顔とご立派なあご髭がトレードマーク、
長野諏訪中央病院の名誉院長・鎌田實先生です。
まずは鎌田先生の略歴をご紹介しましょう。

今から40年前、東京医科歯科大学をご卒業された直後に、
医師不足で困窮していた長野諏訪中央病院より招かれ東京より赴任。
周囲から「都落ち」「二度と東京に戻れなくなる」と反対されながらも、
「だからこそ進んで長野に赴いた」ことから、名医としての人生を始めます。
医師と患者の間にまだまだ隔たりがあった40年前の長野県で、
あくまでも「地域」の人々の生活の中にこそ「医療の真髄」があると信じ、
住民の生活の場に積極的に参加しながら「住民と共につくる医療」を実践。
減塩など独自の「健康づくり運動」を長年続けることで、
かつて脳卒中死亡率の高かった長野県を今では日本一の長寿県に変えた、
その立役者でもおられます。

早くも30代で院長に就任し、赤字だった長野諏訪中央病院の黒字化にも大成功。
「あたたかな医療」と「経営の黒字化」を同時に叶えました。
しかし、その相反する2つの理想を叶える日々の中で、
48歳の時、ある日突然、パニック発作を発症。
往診に行っても車からおりられなくなったり、深夜に突然目が覚めて動悸に苦しんだり、
眠れなくて落ち着かなくて不安が膨らみ、明け方までウロウロと歩きまわる日々。
発作の度に奥様の寝室に行き、奥様の隣にもぐりこみ抱きしめてもらって、
そのつらい時期をご夫婦で乗り越えられたそうです。

この奥様、カマタファンならよくご存じでしょう。
ご著書にて「サトさん」「さと子さん」「カマタ家のゴッドマザー」として
大切なシーンに頻繁にご登場されている、かの有名な奥様です。
そもそも奥様とは、学生結婚。医学部の学生で学生運動に夢中だった頃に、
周囲の大推薦と祝福を受けて、お二人は幸福な結婚生活を始められました。
すぐに一男一女に恵まれて、あたたかな家庭をつくりあげ、
今となっては「おしどり夫婦」としても名高いお二人。
鎌田先生の担当編集者ならほとんど誰もが、奥様にもお世話になっている始末。
打ち合わせにも地方講演にも、世界中をめぐる旅行にも、ほとんど奥様が同行されます。
奥様なくしては鎌田先生のご活躍はあり得ない、
そんな理想的なご夫婦像、家庭人としてのあり方までもが評価されて、
鎌田先生は2009年に「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」を受賞されました。

と、ここまで書いてみると、まるで一点の曇りも挫折もないような、
成功者の順風満帆な人生のようですが......違います。
実は鎌田先生には、実の親を知らない、という生誕の秘密があるのです。
1歳の時、貧しい夫婦にもらわれて、育ちました。
父親はタクシーの運転手、母親は重い心臓病で入退院を繰り返している、
裸電球一つしかないような質素な家だったけれど、
あふれるほどの「心」がある一家で、とても幸せな幼少期を過ごされたそうです。
そのため、30代になるまで、育ての親を実の親だと信じ込んでいたといいます。
ある日、パスポートを取得する時に、初めて戸籍謄本を見るまでは!
その真実を知った時から、鎌田先生の人生は大きく変わります。

真実を知らなかったのは先生おひとりだけで、
奥様など周囲の方々はみんながその真実を知っていて、
先生のために「優しい嘘」をつき続けていたといいます。
先生は奥様と話し合い、「優しい嘘」にだまされ続ける事を決意します。
そして、育ての父親・岩次郎の名を何百年も世に残したい、との願いを込めて、
300年以上はもつといわれている頑丈な丸太ばかりを使い、
「岩次郎小屋」という看板をかけた大きな家を建てるのです。
東京でひとり暮らしをしていた晩年の父親・岩次郎を呼び寄せるためでした。
そして岩次郎の亡くなる日まで、3世代が一つ屋根の下、
笑顔のたえない日々を営んでいきます。
鎌田先生は、貧しい「にもかかわらず」自分を育ててくれたご両親の影響を受けて、
「誰かのために生きる」人生をご自分も歩んでみたいと切望するようになったのです。

しかし、100%の人生をいかにして「誰かのために生きる」べきか、
懊悩の日々が続きます。医師として家庭人として多忙極まりない生活の中で、
なかなか「誰かのために生きる」ことは、難しい。
そんな時に、ふとひらめいたそうです。「まず1%、誰かのために生きてみよう」と。
以降、鎌田先生は常に「1%」を意識して、生きてこられました。
すると、1%にはいろいろ不思議な力があることに気がつき始めたといいます。

......そんな鎌田先生のあたたかなヒストリーを伺っている時に、
「ならば、先生の人生の根幹にある1%の力についてご執筆ください」と
お願いしたのがこの本の始まりでした。

1%は誰かのために生きてほしい。
「1%なら」、心も体も動きだす。
「1%ずつ」、事態は好転する。
「1%だけ」視点を変えてみると、見えないものが見えてくる。
「あと1%」を積み重ねると、「101%」の結果にたどり着く。
みんなが「1%」生き方を変えるだけで、個人も社会も幸福になる。

「もう1%」を積み重ねている内に、この本はできあがりました。
「1%」には、小さいけれど、とてつもない力があります。
一人でも多くの方にその力を信じていただけることを祈っています。
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◎鎌田實『1%の力』 ●1000円(税別)

***刊行記念イベント開催***
・10/29 京王百貨店新宿店開店50周年&鎌田實さん『1%の力』刊行記念トークショー&サイン会
http://www.keibundo.co.jp/news/detail/1029501.html

(初出:『かわくらメルマガ』vol.55 編集担当者が語る、鎌田實『1%の力』ができるまで)