11月25日発売予定の高槻真樹著「映画探偵─失われた戦前日本映画を捜して」刊行とそれを記念した上映企画に先立ち、選りすぐりのレア作品ばかりを集め、一挙上映されるイベントが開催されます。
詳細は
こちら(ザムザ阿佐ヶ谷イベント詳細ページ)。
【日時】10月27日(火) 開場18:30/開演19:00
【会場】ザムザ阿佐谷
【料金】3,000円
【弁士】片岡一郎
【楽士】上屋安由美
【上映作品】
『僕らの弟』1933年(S8)/日活太秦/56分
■監督:春原政久/原作・脚本:依田義賢
■出演:中村英雄、西村五男、村山行代、佐藤圓治、須藤恒子
戦後サラリーマン喜劇の佳作『三等重役』で名を残す春原政久監督のデビュー作であり、名匠・依田義賢のサイレント期の貴重な脚本だが、発見後長らく埋もれていた。関係者を訪ね歩き調査を始めた大阪芸大・太田米男教授は、思いがけない発見に行き当たることとなる。貧困から出稼ぎに行かねばならない父親を支えるために、幼い弟妹を世話し奮闘する少年の姿を描いた、実話に基づく美談だが、それにとどまらない。映画史的にも近代史の資料としても極めて貴重。
『荒木又右衛門』1925年(T14)/日活大将軍/6分
■監督・脚本:池田富保
■出演:尾上松之助、河部五郎、市川市丸
生誕140年を機会に再評価が進む、日本映画最初の大スター・尾上松之助の代表作。主演千本を記念して制作された超大作で、歌舞伎調にこだわってきた松之助が、本格的な映画表現に挑み、大きな話題を集めた。こちらは太田教授自身が発掘したもので、わずか6分の断片にすぎないが、クライマックスの立ち回りがほぼ残されている。クローズアップやカット割りを受け入れつつも、所作にはまだ歌舞伎的ふるまいが残っていたこともわかる。
『荒木伊賀越え三十六番斬り(荒木又右衛門)』1930年(S5)/松竹下加茂/20分
■監督・脚本:悪麗之助
■出演:月形龍之介、若水絹子、堀正夫、高田浩吉
初公開時のタイトルは「荒木又右衛門」。現存版は20分程度の短縮版にすぎないが、ひととおりの筋が分かる作品としては、ほぼ唯一の悪麗之助監督作品。悪は、 虚無的な作風で映画史に名を残したとされてきたが、本作品はそんな気配を微塵も感じさせない、痛快なコメディ時代劇となっており、衝撃を受ける。残念ながらフィルム状態はかなり悪いが、楽しさは格別。
『一殺多生剣』1929年(S4)/市川右太衛門プロダクション/26分
■監督・脚本:伊藤大輔
■出演:市川右太衛門、高堂国典、金子弘、泉春子、中村栄子
幕末の江戸を舞台に、悪逆の限りを尽くす官軍を相手に孤独な闘いを挑む旗本を描いた。伊藤大輔絶頂期の一本で、残存は四分の一程度だが、絶妙の編集に助けられ、ほぼ全体像をつかむことができる。残念ながらこれもフィルム状態は極めて劣悪であり、将来的にはデジタル修復が必要と思われるが、それでも冴え渡った伊藤演出の見事さは十分に感じ取ることができる。2012年京都国際映画祭での初公開から3年、待望の関東公開である。
●DVDもしくはBlu-rayでの上映です。
●生演奏で上映するのは『僕らの弟』のみです。