『かわいい闇』〜物語としての花活け〜
『かわいい闇』(マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン作、ケラスコエット画 河出書房新社)を読み、花でその世界を「再話」してみたいと思いました。
これまで、能楽師や物語のアンソロジスト、音楽家たちと、謡や朗読や、音楽の中で「物語としての花活け」をやってきて、言葉の持つメロディーやリズムだけでなく、様々な国の言葉の独自の響きや波長や、抑揚、韻や間などに興味を惹かれています。フランス語の語りの中で、バンド・デシネの世界を植物で再話する試みをしてみたいと思っています。
『かわいい闇』には、美しい自然のうつろいの中で、恐るべき子どもたちの、残虐性や、遊戯性、身勝手、独善などなど、この世界のどこかで常に繰り広げられている崩落と生成が描かれていきます。花や庭の手入れをしていると、彼らは淡々と営みを続けています。その速度と深度に圧倒されると同時に安堵もします。自然には、人の知覚では捉えきれない大きな大きな流れがあって、それをどこかで切り取れば、少し分かるというように、色や形など身体知覚に合わせて取り出すことをやってきました。歌も物語も花も、その宇宙の切り出し方の一つだと想います。
今回は『かわいい闇』の生と死のふるまいを、『かわいい闇』の作画担当ケラスコエットさんの朗読の中、「花活け」と言う、物語やある種のユートピアを引き寄せる方法でご覧いただきたいと思います。『かわいい闇』は、最初は明るい初夏からはじまります。その後、夢の中の美しい秋をイメージしたり、冬という明るい闇へのうつろいをライブで表現していきます。
冬の気配を濃く感じながら、『かわいい闇』という贈りものをひとつ、みなさんとほどいてみたいと思います。リアルな「生もの」の植物を扱うことで、森や闇に一層ふみ惑うことになるかもしれませんし、物語の息吹を感じていただけるかもしれません。
温室 塚田有一
日時;2014年11月21日(金)
出演;原正人(『かわいい闇』翻訳家)
大西愛子(翻訳家;通訳)
塚田有一(フラワーアーティスト/ガ-デンプランナー)
Skype参加;
ケラスコエット(『かわいい闇』作者;画)
場所;リムグリーン
千代田区西神田2-4-1
東方学会本館三階33-2号室
時間;19時〜21時半頃まで
料金;3,500円(税込)
*当日、『かわいい闇』の販売もございます。
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